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ミッドサマーのHrtのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.2
ダニーは不安障害からの救いを求めて恋人であるクリスチャンに依存し続けていた。
彼女がホルガ村のコミュニティに抵抗しつつも徐々に引き込まれていく様子は宗教の性質から言って当然の成り行きだ。

全編を通しトリップの表情やドラッギーな揺れ方にこっちの頭までおかしくなりそうだった。
本当に何を飲まされてるのか食べさせられてるのか分かったもんじゃない。
そこかしこにウィードでも生えているんだろうか。
バッドトリップで見る幻覚だったり手足が植物と同化する感じとか、気持ち悪い。
『アナイアレイション -全滅領域-』でも無理だったので。

というか『ヘレディタリー/継承』でもそうだったけどコミュニティ単位で騙しにかかられたらどうしようもないよねという感じ。
村ぐるみの犯罪を暴いたのは自分の記憶の中では古畑任三郎だけだ。
今回の標的は論文研究あるいはセックス目的のアメリカ人、という時点で全滅ルートが確定している。
ペレにとってはさぞかしイージーだっただろう。

たぶん村の話者から語られる話はほぼ全て嘘だ。
90年に一度しかない大祝祭の割にはメイクイーンの写真が多すぎるし、村の建物も簡素ではあるものの古さがない。
新興宗教的な過激性や盲信性もある。
とにかく全てが異様に新しい。
考えれば考えるほど欺瞞で満ちている。
そんな偽りのコミュニティに精神的に染まっていくダニー。
彼女の最後の表情からも『ヘレディタリー/継承』のラストとの相関関係を見た。
この2作はアリ・アスターのシグネチャーを確立するのに十分すぎるものだ。
どちらも似通っているので次作は違った手法のものを観たいと思うものの、絶望の淵に追いやられるような作品をこの映画作家には期待してしまう。
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