佐藤

ミッドサマーの佐藤のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.4
きれいなポスターしてるだろ。
ウソみたいだろ。
ホラーなんだぜ。これで…
と、思うくらい始めはそんな映画とは知りませんでした。
しかし、蓋を開けてみたら、色彩の豊かさ故の、明るいからこそ怖い全く新しい形の作品でした。

まず、冒頭から地獄は始まります。
加えて、恋人との良好でない関係が、じわじわと効く不快感を演出します。
その常に漂い続ける不気味さと不穏な雰囲気、居心地の悪さは、物語の中盤で閾値を越えます。
もうそれはじわじわではなく、メーターを振り切る勢いで越えてきます。
しかし、最後には、見方を変えれば悲劇から生まれたカタルシスであり、悟りのエクスタシーでもあると思えてしまったところが、またたまらなく嫌です。
一方、本作はラブストーリーとしての側面も持ち合わせているのが素晴らしい点の1つでもあります。
アリ監督は「ホラーではなくカップルについてのファンタジーだからカップルで来てね」と、嘯いています。
普通に撮っても地獄なカップルの話に、地獄の状況を上乗せするという、地獄のミルフィーユを作り上げるアリ・アスターは本当に最高の最悪な監督だと記憶しました。
関係性を見直したい恋人と観るにはちょうどいいのかもしれません。

総合的に見るといい意味で非常に嫌いな作品でした。
今まで観た映画の中で、胸くそ悪さに関したら上位層に位置するポテンシャルがあります。
この芸術性を兼ね備えたワンランク上のホラーを、映画好きな方を除いて、ぜひとも観ないでください。
また、観た人は公式サイトに観た人限定解説ページがあるので、そちらを訪れてみても楽しいかもしれないです。
佐藤

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