佐藤

オールドの佐藤のレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.8
これは今年観た作品のベスト5に入る勢いです。

物語はある一家がリゾート地へとバカンスへ。
そのホテルの支配人から岩山に囲まれたプライベートビーチに案内されます。
優雅なバカンスかと思いきや、そこは30分で1年分の時間が経つ不思議空間。
死体は見つかるし、ケータイは繋がらない、子どもは急成長、出ようとしても気絶するため出られない。
そんなシチュエーションスリラー、SFスリラー的映画です。

この作品、びっくりドッキリさせてくる系ではないし、個人的にはホラージャンルではないのでホラー映画が苦手な人でもギリギリ観られるかもしれません。
舞台は開けたビーチでありながら、演者の接写やロングカットを多用しているため、全体を通して閉塞感というか圧迫感があります。
また、何か事態が起こった際に、すぐに現場を映さずに、人物の悲鳴やリアクションから撮るというシャマラン監督の焦らしプレイのオンパレードです。
これらのため、終始いい意味の不快感を味わい続けられます。
また、老いる事への根源的恐怖、子どもが自分の想像の幅を越えて理解することが難しくなっていく成長の速さへの恐怖も楽しめます。
また、印象的だったのは、ある一人の子どもがプロムも卒業式も行けないなんて不公平だ、と発言するシーンです。
世間の時は止まっているのに自分の時間だけ過ぎていってしまう恐怖。
これは子どもの時間の重みが大人よりもあると思うかたわらで、このコロナ禍で様々なイベントがなくなっている若者たちの憂いを上手く作品に落とし込んでいるなと感心しました。

まさにこんな時代だからこそ、今観るべき映画です。
佐藤

佐藤