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ペイン・アンド・グローリーのslowのレビュー・感想・評価

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その光が、今でもこの世界を照らし続ける。

アントニオ・バンデラスの根本イメージが『ストレンジャー』『マスク・オブ・ゾロ』辺りで止まっていたので(他の作品も観てはいるけれど)、本作の枯れたバンデラスにはちょっと驚いた。圧倒的渋み。アルモドバルカラーの衣装も難なく着こなす。初老の男が人生を「かいこ」することで、ひと時瑞々しい心を取り戻す。そんな様をそのバンデラスが好演するもんだから堪らない。これは男優賞も納得。自伝映画といえば、ホドロフスキーの『エンドレス・ポエトリー』の強烈なビジュアルが脳裏に焼き付いているし、ベロッキオの『甘き人生』は知るはずのない記憶でありながら懐かしい手触りを思い起こさせる大好きな作品だった。この『ペイン・アンド・グローリー』は、どちらの良さも程よく内包しつつ、どちらよりもパーソナルな瞬間瞬間を切り取ったものだったように思う。素晴らしい。
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