平凡な家庭で育ち大卒で広告会社に入社し結婚して娘をもったキム・ジヨン。どこにでもいそうな平凡な彼女が心を壊してしまう。何が彼女をそうさせたのか?
昨年、日本で火がついた韓国文学。文芸春秋の特集号「韓国・フェミニズム・日本」が雑誌なのに異例の重版になったのも記憶に新しい。「82年生まれ、キム・ジヨン」はその先駆けだった。ブームにのって原作を読んだ。非常に面白かったが映画は構成、展開が原作と異なる。あのままでの映画化はやはり無理だろう。
何が彼女の心を壊したのかと書いたが、それは社会、個人の作り出す無数のトゲだ。女性なら誰もが感じてるはずの。
ただ、そのトゲの描写が苛烈に描写されないのだ。だから、フェミニズムに全く無関心な人が観るとキム・ジヨンの病は”甘え”にしかみえないという。
一般的に見れば、女性に理解のある夫(コン・ユ)ですら無神経な言葉の積み重ねでキム・ジヨンを追いつめていく。分かりやすい、苛烈な暴力、差別でないだけに質が悪い。
そういう意味で本作はリトマス試験紙だ。「最近はいちいちうるさくなって言いたいことも言えないね」なんて言ってるおっさん(映画にでてきますが)は観ても理解できないし、男性社会に過剰適応した女性もまた理解できないだろう。
自分の会社での振る舞いとか考えちゃいますよね。男性諸君観た方がいいよ。
日本と韓国は微差はあれど同じ病を抱えているのだなと分かる一作。日本でもこういうジャンルの映画もっとあればいいのに。
ちなみに映画の予告、公式サイトは本作のテーマをガン無視したフレーズ多用してて非常によろしくない。