やんげき

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのやんげきのレビュー・感想・評価

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後半30分のネタバラシとラストシーンの気持ちよさが癖になるミステリー映画。

叙述トリックは頻出するから騙された感と違和感が半々位だけど、動機とラストの気持ちよさは絶対に事前には導き出せないので、どんでん返し作品が好きなら間違いのない一本。

分かって観るオープニングの痛烈な皮肉も見事!

基本的に文学への愛に満ちたスタンスを貫きつつも、ミステリー小説は、娯楽でしかないのか?文学たりえるのか?的なテーマから、芸術と商業の歪な共犯関係、翻訳者という日の当たらない人間を地下室に閉じ込めるという形でスポットするなど、幾重にもテーマが可視化された綿密な演出が美しい。

ここまで出来が良いと、エリックはただの拝金主義のサイケ野郎じゃないような気もするし、翻訳者としての矜持を感じられるエピソードも欲しかった。などディレクターズカット版で50分くらい付け足して深みを出して欲しい気持ちもする。
やんげき

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