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クイーン・オブ・アイルランドのkyokoのレビュー・感想・評価

4.0
国民の80%以上がカトリック教徒であり、1993年までは同性愛は犯罪とされていた国アイルランド。
その国で2015年、国民投票によって同性婚が合法化された。
その立役者であり、アイルランドの国民的ドラァグクイーン“パンティ・ブリス”の、LGBTアクティビストとしての活動と人生を描いたドキュメンタリー。

名前ぐらいは聞いたことがある、程度にしか知らなかった人。
90年代初めにはパフォーマーとして日本のゲイクラブにいたことなんてもちろん知らなかった(その時代の映像は最高にはっちゃけていて実に魅力的。日本にいる間ほとんどイヤな思いをしたことがないそうだ)。

帰国後、アクティビストとして公営テレビに出演したときのホモフォビア(同性愛嫌悪)ジャーナリストに対するコメントが訴訟問題を引き起こす。この時のテレビ局の対応が世間の議論を呼んだ。
このあとパンティが語った10分間のスピーチは、世界中の人々の気持ちを鷲掴みにする。繊細さと力強さを併せ持つ素晴らしいスピーチだった。
無知であることが他人を追いつめることに、私たちはどれだけ気づけているだろうかと、改めて己を省みる。

国民投票での勝利から故郷への凱旋まで泣きっぱなしだったな。雨の中パンティを挟んで親子三人傘を差す後ろ姿にまた涙。
故郷で披露するネタは一応過激なものは除いていたけれど、それでも結構な下ネタ(意味が分からないものも多かった)。でも老若男女が大爆笑してて「あんたも好きね~」って感じで微笑ましかった(笑)

この後アイルランドでは、ゲイで移民の子供でわずか38歳の首相が誕生した。さらに中絶の合法化に対する国民投票がおこなわれ、70%近い賛成票を得て年内にも法整備が整うという。アメリカとは真逆の方向。。。

杉田水脈議員による例の「生産性ない」発言を携えて、とある新聞社がパンティにインタビューしにいった記事を発見した。
有料記事なので全部は載せられないけれど、ひとつだけパンティのコメントを。
「LGBTだけでなく、少数派を受け入れた国や社会は、さらに豊かになる。私たちは人生の中で自我への葛藤を経ている。多数派とは違う発想や視点を持てる。そうしたユニークな個性を排除すると、社会は凡庸になり、経済的な損失も被る」
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