真田ピロシキ

パラサイト 半地下の家族の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.9
賞を取ったポン・ジュノの格差社会映画で貧困家庭が金持ちの家に入り込む。そのくらいの情報しか抱かずに見たので犯罪コメディーやってた頃は意外だった。いやね、てっきり金持ち家族を監禁するなり洗脳するなりして入れ替わるホラーと思ってたんです。それが1時間くらいはかなり笑える。順調に進んでた偽装生活が綻び始めてもあの北朝鮮パロディとか笑えるシーンがまだあった。

でもそこからは全く笑う所がない。ダイレクトな比喩を以って描かれる格差描写。トイレの演出がとても象徴的で下からの流れを抑え込み臭い物に蓋をする行為が意味するところは大きい。しかもこれをやってるのが上層の人間ではなく半地下、まだ更に下がいる人間なんだというね。実際にも地下の人間を縛って閉じ込めた訳じゃないですか。富裕層と貧困層の対立よりもまず先に貧困層の中で断絶があると言われてるように感じた。日本の話だが生活保護バッシングをやってる人に貧困層が多いのを考えると正鵠を射ている。

終盤について。パク社長が本人の気付かない所で差別意識を抱いていたのは分かるし、ギテクが刺したのはあの時初めて富裕層と貧困層というカテゴリーで互いを意識したのだと思う。でもこの辺は映画を締めるための儀式のようでそこまで来るものはなかった。あの金持ち家族は全体を通して見るとキャラクター性がやや薄かったように思う。金持ちのちょっと抜けた一家という記号で。その辺が格差映画としては物足りなかったかもしれない。