銀幕短評 (#281)
「あなたの名前を呼べたなら」
2019年、インド、フランス。 1時間 39分、公開中。
総合評価 81点。
身分のちがう男女の恋愛をえがく。
「馬を放つ」(#268、80点)
の回で、こう書きました。
恋慕の情は、誰もが だれかに抱くものではあるが、それを相手に伝えてよいかどうかは、ときと場合による。かといって、伝えてよいかどうかなどと冷静に考えることができない場合もある。いずれにしても、一度発せられた言葉は(ことばとは限らないが)元に戻すことはできないのだから、思いのたけをどう伝えるかは 大げさにいうと人生の考えどころである。
「トリスタンとイゾルデ」(#214、68点)
の回では、こうも書きました。
思うに、倫理的な枷(かせ)と動物的な愛の欲望とが、相容れなく拮抗するときに、その悲恋度は頂点に向かう。だれも悪くない、互いに深く愛している、しかし抜き差しならない障害がある、踏み越えるべきか忍ぶべきか、長らうべきか思い切るべきか、互いにどんどん分からなくなり 身もだえする。
これら以上のなにかは、わたしの貧相な恋愛経験からは今のところ ひねり出せるものではありません。
芝居と音楽が たいそう素敵です。