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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のryoのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

見終えてまずは、形式に憑かれた男ウェス・アンダーソンらしい映画、雑誌という枠組みを借りた、シュールでキュートでややブラックな語り口の、寓話めいたオムニバス、役者は豪華だし様々なこだわりと工夫は面白いけど、整然とした静止画的な執着(冒頭のビルと階段のシーンで思わず待ってました!と言いたくなる)が行き過ぎて、急にPOVに切り替わって「動き」がもはやギャグとして使われる(刑務所での追いかけっこ)ようなのは流石にやりすぎでは、と思った。

のだけど、なにか釈然としないというか、見落とした足りないピースがあるような気がして、パンフレットを買った。《グランド・ブダペスト・ホテル》が歴史作家シュテファン・ツヴァイクに捧げられていたように、この映画にも「献辞dedication」がある、と山崎まどかさんの記事に教えられた。『The New Yoker』、「小粋で、都会派で、風刺があって、ジャーナリズムと文学にかけては並ぶことのない唯一無二の雑誌」への憧れ。インタビューで、監督は「今作は『ニューヨーカー』と著名な記者たちにインスパイアされた映画です」、とはっきり述べている。米国では公開と同時にニューヨーカーに関係する雑誌記者たちについての本が出版されたらしい。描くべき具体的なイメージがあり、対象に敬意と愛着を持つがゆえにこそ、遊びがより過剰に、寓話的になる、ということはあるように思う。
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