つう

思い、思われ、ふり、ふられのつうのレビュー・感想・評価

2.0
『この世で一番、悲しいのは気持ちが伝わらないこと。』


監督は漫画原作実写映画化作品を多く手がけている三木孝浩。


咲坂伊緒先生の同名コミックを実写映画化。秋には劇場版アニメの公開が控えている。ちなみに同じ作者の「アオハライド」実写映画も三木孝浩監督が担当している。


あらすじとしては。幼馴染で同じマンションに暮らす由奈と和臣。両親の再婚をキッカケに姉弟になってしまった朱里と理央が2人の住むマンションに引っ越してくる所から物語は始まるのだった‥


原作は全12巻で完結済の作品で既読済。


高校生の青春を切り取る映画としては映像面では非常に考えられて撮影されているのが分かる。


たが、肝心なストーリーが原作ファンの立場からすると解釈違いが過ぎる点が多すぎる。


全12巻の作品を2時間の映画に落とし込むのは尺としては無理なのは承知している。


この「思い思われ」はスマホが登場したということによって、かつて恋愛モノのギミックであるすれ違いという現象が解消されてしまった為に作りが難しくなったと言われている。


それをこの「思い思われ」は現代の若者の空気を読み過ぎてしまうこと。自分の心を押し殺すコトでリスクを侵さずに大きな失敗はしないけれど無難で保守的な選択を選んでしまうという特性を使って自分よりも相手の顔色や状況によって仮面を変えていくということで『本音』とすれ違いを生んでる作品なのだ。


そして、製作陣が考えているのはキャストからしても中心にいるのは朱里役の浜辺美波と理央役の北村匠海だろう。


これは予告でも流れているシーンなので言及するが。物語序盤に理央が朱里にキスをするというシーンがある。これが印象的だから、このキャスティングになっているのが分かる。


原作の「思い思われ」では話の中心にいるのは間違いなく由奈なのだ。由奈は絵本に出てくる王子様に憧れを持ち、自分に自信がなく人見知りという少女漫画では1000回観たようなキャラクター設定だ。


主要メンバーは序盤は、恋に恋する由奈には、まだ精神的にも幼さの残るその純粋な姿を見て世話を焼こうとする。


しかし、その由奈がキッカケこそ「恋」というモノだったけれど。そこから、人間として成長する。最初は由奈の手を引いていたつもりが、いつしか由奈が変わっていくことが眩しい姿は見るもののエールとなり、朱里・理央・和臣の3人は由奈のようにと自らの本音に従って走り出すようになるという姿を描いているのだ。


それが全く製作陣が分かっていないのが丸出しなシーンがある。


下駄箱で帰ろうとする朱里を引き止める理央。それを目撃したクラスメイトが数名、2人のコトをからかう。。

原作では由奈は話すのも朱里。男性には苦手意識があって和臣とは普通に話せるけれど理央には今でも緊張してしまう。でも、そんな由奈がそうしてからかわれる2人の間に入って「小学生みたいな言い方しないで」と言い放つ。


その意外な行動にイライラしていた理央と朱里も溜飲を下げる。そして、そのまま由奈に続いて入っていくのが和臣なのだ。


このシーンは、そんな人見知りで奥手な由奈が勇気を出して2人を助けるというシーンであり何より由奈自身が成長したコトをキチンとした形で表している大事なシーンだ。


映画の中で序盤において和臣の活躍がないから、そうした改変を行ったのだろう。なにも原作のまま映像化しろという原理主義な考えではない。映像化にするなら、その意義のために改変をすることは、むしろ大歓迎だ。


良い改変もある。和臣のとある癖。これは原作では鼻を触るという設定になっている。これは鼻を触るというのは漫画表現においては比較的、定番な癖になっているけど。これを実写映画という媒体でするというのは少し違和感が出る。だからこそ、違う癖に置き換えている。こうした配慮が大きなストーリーの根幹になす部分にはなぜ行き届かないのだろうか。非常に残念だ。


この作品は結果ではなく過程の部分に大きな価値があるという作風になってる。原作では映画で描かれていないのも含めて大小さまざまな失敗を重ねるシーンがある。結果こそ失敗だったかもしれない。でも、その挑む姿にエールを貰い、救われている人がいる。その救いが遠くからアナタの元へと戻るというのを描いている。


じゃあ、この実写映画はどうなのか。原作で重要な結果(シーン)だけを重ねているだけ。原作を読んでいない人にはエモーショナルなシいいむるーンが続くから感動もするかもしれない。


もちろん。その部分には「思い思われ」が持っている魅力の1つではある。でも、他にはない「思い思われ」が持つ魅力というのは先ほど述べた部分なのだ。


咲坂伊緒先生の作品は「恋」というモノをフックにしてキャラクターの成長を描くというモノは一貫している。人の美醜にかかわらず人が成長する姿は美しい。その姿に人が恋に落ちるのは当然のこと。


そこをキチンと原作読んで製作陣は成長してください。


予告だけなので、まだまだ分からないが劇場版アニメは由奈を中心に描いてくれそうなので楽しみにもう1度、原作を読み返しながら待ちたいと思う。
つう

つう