Hrt

思い、思われ、ふり、ふられのHrtのレビュー・感想・評価

3.8
普通に眩しい。
咲坂伊緒、三木孝浩、浜辺美波の名前が並んでいる時点で既に自分の中での評価が高いのは決定していた。
が、そのハードルも悠々と越えてくる内容。
高校生が主役で春~冬にかけての季節の流れを描いていくが昨今の10代向け映画作品群のような演出的な外連味は無く、学生イベントも夏祭りと文化祭の2つだけ。
詰め込むのではなく削ぎ落とすことで4人の微妙な関係と心の機微がよく掴める。

ストーリーテリングだけじゃなくキャストも本当に魅力的で、それぞれが一番いい演技をしている。
努めてキャラクターを語ることはせず、とても自然体でそこに「居る」という感覚。
雨越しの浜辺美波と北村匠海の美しさ。
光の演出具合もさすが三木監督で、自然光が人物に当たる角度までが計算されている。
カメラの動きもあくまで人物の心情表現の一助となっている。
こうしたティーン映画らしからぬキャラクター造形の緻密さが本作の一つの魅力だ。

作中に登場する映画作品のセレクトも中々に巧い。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』という和臣の心情表現。
何かしらからの抑圧という点では4人全員が現在進行形で受けていたが、マンションのエレベーター前で偶然出くわした理央と和臣は人一倍その感覚を持っていただろう。
Official髭男dism『115万キロのフィルム』が主題歌の本作は見方を変えれば和臣が主人公とも取れる。
そう、ヒゲダンのこの2年前の楽曲は偶然本作ととてつもないリンクを遂げている。
音楽のかかり方も絶妙なタイミングでゾッとしてしまった。
そうしたリスペクトフルなエンドクレジットを観てしまったことでこの作品は素晴らしいと感じざるをえなかった。

観る前と観た後で自分の中の何かが変わるような映画ではない。
そうした映画じゃないからこそ作品単体としての徹底的に削ぎ落とされた上で成り立つ上質さが際立っていると思う。
Hrt

Hrt