こなつ

はちどりのこなつのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.8
2020年韓国映画
世界各国の映画祭で50冠を超える受賞。韓国でも異例の大ヒットとなった作品。
当時劇場で観れなかったが、やっと鑑賞。

誰にでも経験があるあの頃の思い。大人と子供の間で揺れ動く、危なっかしい年頃。
中学2年生という多感で難しい世代の女の子ウニ(パク・ジフ)。この物語は、彼女の家族や友人達との触れ合いを通して、思春期の不安定な心情を見事に描いている。

舞台は1994年の韓国・ソウル。ウニ(パク・ジフ)は、餅屋を営む両親と大学受験を控えた兄、高校生の姉と共に集合住宅で暮らしていた。勉強が嫌いで学校生活にも馴染めず、ボーイフレンドや塾で知り合った他の学校の友達と遊んでいる。家父長制が深く根を下ろす韓国で、父は厳しく、父の言うことは絶対。しかし、両親ともウニにはあまり関心を持たず、放ったらかし。
そんな時、彼女が通う漢文塾に新任の女性講師ヨンジ(キム・セビョク)がやってくる。それまで孤独な日々を送っていたウニは、どこか不思議な雰囲気を漂わせているヨンジが自分の話に関心を示してくれたことで、徐々に心を開いていく。そんな折り起きた聖水大橋崩落事故によって、ウニの心が少しずつ動き出す。

1981年生まれの監督キム・ボラが自分の過去を題材に製作した長編デビュー作。終始ウニの視点で日常が描かれている。閉塞的な環境と身勝手な大人たちを冷やかに見つめながら少女は少しずつ大人になっていく。そんな誰もが経験する思春期の不安定さをパク・ジフが丁寧に演じている。ヨンジ役のキム・セビョクの不思議な魅力が心地よい。この懐かしさは何なのだろう。自分の中学生時代に一時思いを馳せた。

物語全体がウニの日常を切り取ったような淡々とした流れにも関わらず、グイグイ惹き込まれて行く。あまりにも急激な経済成長を遂げたほころびを象徴するような聖水大橋崩落事故。実際にあった事件によってウニのような女の子が確かにソウルの街で生きていた。そんなリアリティな感覚にもなった。
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