こたつむり

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.5
♪ 君のことを守りたい 
  そのすべてを守りたい
  君を生きる証しにしよう 
  誰のためでもなく

イヤな奴が出てこない世界名作劇場。
…なんて一言で済ますのは乱暴ですが、これ以上の表現が見当たらないんですよね。

ある意味で現代的だと思います。
昔の(本家の)世界名作劇場は、悲惨な状況を積み重ねたうえで最後に報われる…という展開でしたが、今どきは許されません。

要は“現実”がツラすぎるんですよね。
閉塞感ばかりが強くなる昨今、わざわざ二次元の世界でツラくてシンドい物語を観たくない…という気持ちなんだと推測します。

ただ、それだけでは物語が浅くなるのも事実。
ゆえに、綺麗な部分は更に綺麗に仕上げる…という工夫を凝らします。本編でも思いましたけど、澄んだ彩色が透明感を強く感じさせるんですね。

あと、本編のフォローもバッチリ。
登場人物たちの“その後”はファンが最も観たいもの。例えば、ルクリアのエピソードとか、物語の主軸に掠りもしないのに登場するのは…もしかしたら、地味にファンが多いのでしょうか。

また、百合を連想させる序盤とか。
本編では影が薄かった“師匠”が活躍するとか。
エレベーターのことを「兵器」と呼ぶとか…細かい部分も観客に寄せた印象が強かったです。個人的には“髪型”に言及してくれたのが嬉しかったですね。ずっと気になっていたので。

やはり、大切なのはきめ細やかな配慮。
全体的なトーンは“少女漫画”の世界観ですし、舞台設定も欧州っぽい(エッフェル塔…)し、男子立入禁止の雰囲気があるのも…あ、これは僕の偏見かな。

まあ、そんなわけで。
『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の外伝…というよりも後日譚。本編と同じようにスロースターターなので序盤は穏やかですが、油断すると涙腺が崩壊するかもしれません。

どんなに悲惨な状況でも空は青いからね。
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