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燃ゆる女の肖像のRickのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.9
 「肖像を描く」ことは、その人のことを「見る」ことに他ならない。断片的な情報のみや、モデルのことを見ることなしにはその者の肖像を描くことはできない。不自然なほど極端に「ある存在」が捨象された世界において、あまりにも純粋で報われない恋愛を描くからこそ、その背景に潜む「ある存在」の圧力や桎梏が否応なしに顔を覗かせてくる。オルフェとエウリュディケになぞらえた2人の関係には、常に終わりと死の匂いが漂っているが、その表面には燃え盛り揺らめく炎と「夏」の激しさに満ちている。
 どこを切り取っても全ての画面が一枚の絵画のように美しく、セリフを極力廃し視線や表情によって語らせる映画的な演出には目を見張るものがあった。ただ18世紀が舞台ということで歴史ものを見る目線で見てしまったため、劇中に出てくる肖像画や調度品が18世紀っぽくない部分には物凄く引っかかっててしまった。また見ている間、何を見ているのかの主眼を自分の中で設定できず困惑してしまった。
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