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ダブル・サスペクツ/ルーベ、嘆きの光のcyphのレビュー・感想・評価

3.7
アルノー・デプレシャン×青山真治オンライントークショーつきの回で観た これ下敷きとしてデプレシャンの故郷ルーベを舞台にした警察24時的ドキュメンタリー番組があって、そこから実際の事件・人物・台詞に至るまでをぜんぶ持ってきての作品なんですよ、という解説が肝だと思うので予習しててよかった、復習してよかった!となった フィルムノワールって正直あんまり思わない、気を衒わない癖のない映画だなあと思ったけど監督の語りが素敵でふーん いいじゃんとなっちゃった

監督のトークメモ
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この作品では故郷ルーベで魅了されつつも輪に入れてもらえなかったアルジェリア移民たちのコミュニティ、貧しくものをもたないひとたちに初めて向き合った 彼らによる慎ましい・地面に落ちてそれきりになっている・ありふれた・貧しい言葉たちを、あたかもシェイクスピアのような古典作品であるが如く、光の中に高く持っていくことを目指した

この作品に採用された職業俳優は主演4名のみ 彼らのみパリからやってきて、ルーベの街で孤立していた そして彼らを囲むのは自然な俳優こと市井の人々 主演4名には、「台詞を一言も変えてはいけない」自然な俳優たちには「脚本にある台詞を一言も使ってはいけない」と指示した 2種類の異なる演技が織りなす美しいダンス

これまではフィクションが爆発して花火になる作品ばかりつくってきた ただ、フィクションとは演技からしかもたらされない 今回現実だけに根付いた作品を初めてつくって、自分自身救われたところがある
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正直理屈先行型というか、作品としては本人が必死で避けたはずの連続テレビドラマに近しいものになってしまってるシーンも多かった気がするけど(少なくとも大味ではない) とはいえ最後の現場検分でのシーン 老婆が息を引き取った枕の下でふたりが初めて手を重ね視線を交わすあのカットはとてもよかった 「突然理由なくすべてが光り輝く瞬間」だ、てなった あんなのドキュメンタリーであったら息を呑んじゃうよな レアセドゥの魔法も

警察が凄むのも演技ぽくなく本職の皆さんさすがと思いつつ結構理不尽に詰められるから実際治安の悪い街住んでてそこを取り締まってんのこいつらだったら正直やだな、と思った 「初聖体で会うか結婚式で会うかだ」とかパンチ効いてるけど、凄むときすらそんなかフランス人よ

あと初デプレシャンがこれなのたぶん完全に間違えてるから、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』必勝法と思うことにして他の作品もちゃんと続けてみる あとヒッチコック『間違えられた男』もいつか見る
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