すごく地味ですが思いのほか良作。
シェイクスピアは好きでも詳しくもありませんが、とても重厚で映像がとにかく美しい。
単にシェイクスピアが晩年、断筆後にロンドンから家族の住む町へ戻り、庭いじりするだけみたいなほのぼのかと思いきや、全然そんなストーリーではありません。
20年も帰っていなかった家族との再会も冷ややかで、シェイクスピアは幼くして亡くした息子ハムネットの影を追い続けています。そしてその傷は当然ながら妻や二人の娘にもあり…
明らかになっていく真実や、心の中でくすぶる家族たちの思いが徐々に解きほぐれていく過程がとても丁寧に描かれていました。
数々のシェイクスピア戯曲を演じてきたケネス・ブラナーが、とうとうご本人を演じています。
パトロンだったサウサンプトン伯(イアン・マッケラン)がシェイクスピアを訪ねて来て二人が会話する場面。
『ソネット集』29番
美しくて愛のある詩を読み合うなんて、そういうことかもしれない。
でもおじいちゃんとおじさまです。
なのになんでか感動して涙が。
いろんな逸話を盛り込みつつも、断定的に描くのではなく、みている側の想像をかきたてる描き方は好感が持てました。
「おそらくわたしはヒバリだったのだ」
原題はAll Is True
『ヘンリー8世』より