ShinMakita

ジョーンの秘密のShinMakitaのレビュー・感想・評価

ジョーンの秘密(2018年製作の映画)
1.6
2000年5月、ロンドン。穏やかに暮らす老婆ジョーン・スタンリーが突然保安部の訪問を受け、逮捕された。容疑は国家反逆罪。機密情報を流出させた罪だ…

60年前、ケンブリッジ大学。物理専攻の新入生ジョーン・スミスは、文学専攻の上級生ソニアと親しくなった。彼女に誘われて「映画の会」に行ってみると、集まっているのはイケメンばかり。爵位を持つエリートのミッチェルと、ソニアのいとこであるユダヤ系のレオが美男ツートップだ。ドキドキのジョーンだったが、映画
が始まると、そこが共産主義青年団コミンテルンの集会だったことに気づく。特に共産主義に興味はないが、演説上手なレオに惹かれてしまうウブなジョーンであった。
第二次大戦下、大学を卒業したジョーンは「チューブアロイズ」という研究機関に就職する。そこは原爆の開発を目的とした組織だった。すでにソ連のスパイとして活動しているレオが盛んに研究の情報を欲しがるが、国を裏切るわけにはいかないと断るジョーン。しかし同盟国アメリカが先んじて原爆を開発し、それをヒロシマ・ナガサキで使用した際のフィルムを見て、彼女の価値観が変化する。西側だけが原爆製造技術を手にして、しかも本当に使ってしまった…ということは、今度は技術を持たない東側に対して使用する可能性があるということだ。世界のパワーバランスを保つことが平和に繋がると考えたジョーンは、自らレオに研究成果を流すことを決意する。しかしこの大胆なスパイ行為が、ある悲劇を生むことに…



「ジョーンの秘密」。

以下、ジョーンのネタバレ。

➖➖➖

ジュディ・ディンチ主演の実録ドラマ。なぜ才気煥発で将来のある若い女の子が、国を裏切るスパイ行為に走ったのか。その動機がキモになる映画です。

ソ連がどのようにして西側の人間をスパイに仕立てていったか、などはドラマ「ジ・アメリカンズ」なんかが参考資料になるかなぁ。西側の者が自発的に国を裏切りソ連に加担する映画としては「アメリカを売った男」や「コードネームはファルコン」などがありますね。本作もこの系統ですが、時代が1940年代というのが特殊。動機がカネでも母国への幻滅でもなく、「世界平和」のためというのも目新しいかも。女性が見下される時代に男性の領分で活躍した自負・プライドや尖った倫理観が、彼女をスパイ行為に走らせたのかなぁと思いますね。「核戦争が起きなかったのは私のおかげ」と言い切ってしまう強さは、傲慢にも思えるけど、芯があって理解はできます。しかしいくら時代が時代でも、許容し難いなぁ。こういう性格の人間が医者になったら、間違いなく安楽死やっちゃうとおもうんだよね。

出ずっぱりじゃないけど、ジュディ・ディンチの「普通のおばあさん」演技もみどころ。ジョーン・スミスがいかにしてジョーン・スタンリーとなったのか?夫となるスタンリーさんはいつ、どこで登場するのか?その謎を最後に解くミステリ要素もあり、まずまず面白かったです。
ShinMakita

ShinMakita