ノラネコの呑んで観るシネマ

カブールのツバメのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

カブールのツバメ(2019年製作の映画)
4.5
米軍による侵攻前、旧タリバン支配下のカブールに暮らす世代の異なる2組の夫婦。
ソ連との戦いに人生を捧げた元ムジャヒディンのアティクは、その結果としてのタリバン支配に虚無感を募らせる。
戦地で出会った妻は不治の病に冒され余命わずかで、2人とも生きる希望を失っている。
一方、モフセンとズナイラの若い夫婦は、自由な未来が奪われたことに絶望している。
やがて若い2人の家である悲劇が起こり、それまで平行に描かれていた2組の夫婦の人生が交錯してくる。
ズナイラを襲う恐ろしい運命を知った時、生ける屍だったアティクの内面に変化が起きるのだ。
空を飛ぶツバメですら、悪意ある銃弾に撃ち落とされる抑圧の街カブール。
閉塞した人間を変える力があるのが、タリバンが禁じる芸術と自由なのだ。
水彩調の美しいアニメーションで描かれた、素晴らしい作品。
2019年の製作だが、たった2年先に一周まわって歴史が繰り返された現実が、残酷な皮肉となってしまった。