TaichiShiraishi

朝が来るのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

朝が来る(2020年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

辻村深月の原作からして『朝が来る』のジャンルはミステリーということになっているけど、真相を探ることには重きは置かれていない。それゆえにストーリーは栗原夫妻が子供を作れず苦しんだ過去と特別養子縁組で朝斗を引き取り幸せに育てている第一部とひかりが予期せず子供を産み、引き離され、その後も様々な苦難に見舞われる様を描く第2部にはっきり分かれている。ちょっときっぱり分かれすぎてて、永作博美パートの話忘れそうになったけど。


とにかく演出と演技が丁寧で、子供が作れない夫婦の苦悩も、産んだばかりの子供と別れる少女の悲しみもしっかり尺をとってじっくり描かれる。

余計な説明セリフもなく、ちょっとした表情の変化や口調の揺らぎだけで登場人物たちの信条を繊細に語っていく手腕はさすが河瀨直美監督。


ひかりのパートが始まると若干17歳の若手女優・蒔田彩珠の演技にさらに引き込まれました。
ひかりの純真無垢な14歳の時代と子供も産んで世の中の厳しい現実もたくさん味わった20歳の時代も見事に演じ分けていたし、彼氏の巧と別れなければならないシーン、子供を栗原夫妻に渡す場面の演技は素晴らしい。志乃ちゃん〜からさらにいい女優になったなあ。


また本業の役者とは別に、栗原夫婦が「ベビーバトン」の説明会に行くシーンで養子縁組をした体験談を語る家族、ドキュメンタリー番組で自分で育てられない子供を産む予定の女性たちのインタビュー映像などは、本当にNPO法人「babyぽけっと」で養子縁組と出産を経験した人々を起用しており、演技とは違う生々しさ、真に迫る言葉が出ていた。


全体を通して「今後どうなっていくのだろう」というストーリー展開よりも、その場その場の登場人物たちの心情の機微、言葉のやり取りなどに引き込まれる映画。


そしてエンドロールの途中からこの曲を歌うのがC&Kからとある登場人物たちに変わるのですが、誰が歌っているのか、どのような歌詞の部分を歌っているのかという点も泣けた。

そもそも好きなジャンルじゃないのと、パートをきっぱり分けすぎなので4.6だけど、いい映画なのは間違いない。
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