たく

カセットテープ・ダイアリーズのたくのレビュー・感想・評価

3.8
冴えないパキスタン男子がブルース・スプリングスティーンの音楽に出会って自分の生きる道を掴んでいく実話を基にした話で、ムスリム系に共通する家父長制の頑迷な父親と息子との葛藤をどう乗り越えていくかっていうところが軸になってた。

1987年のロンドンで、詩の創作活動に耽ってるジャベドが出世主義の父に支配されてる家族の中で悶々としてて、世間でもパキスタンからの移民ということで極右のおかしな奴から露骨な差別を受けるのが怖い。
そんな彼に、偶然手に入れたカセットテープから響いてくる歌詞が衝撃的な運命の出会いみたいな感じで降り注いてくる演出が素晴らしかった。
自己実現、家族関係、友情、恋愛、人種差別といろいろな要素が盛り込まれてて、終盤で一気にベタな家族関係の感動に盛り上げていくのが上手かったね。原題はブルース・スプリングスティーンの「光で目もくらみ」から来てて、最後のスピーチで意味が説明される。

イギリスの国民戦線の移民排斥運動が露骨に描かれてて、ジャベドが自由の象徴として旅立つアメリカでいま実際に起きてるのがBlack Lives Matterというのがなんとも皮肉。
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