こたつむり

音楽のこたつむりのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
4.2
♪ デキソコナイ達が行進してゆくよ
  とても楽しそうに旗を振りながら

音を楽しむと書いて音楽。
タイトルが示すとおりに、それを“具現化”した作品でした。

但し、目立つのはセンス溢れる映像表現。
上手いのか下手なのか分からない人間描写、現実を見事に捉えた背景描写、そしてそれらを混ぜ合わせて次元の向こう側に運んでくれる演出。どれもこれもが真正面から殴りかかってくるのです。

あと、独特の間を感じるギャグも良いですね。
「バンドやるぜ!」と勢いだけで始めた構成が“ツイン・ベース”って笑えます。大いに笑えます。しかし、よくもまあ、チューニングも無しに“あれ”が成立したものですなあ。

でも、これが本当の音楽なのかも。
ある意味で彼らは“音を作った”のです。
そんな表現は一切ないですけど。適当にやっているようにしか見えないですけど。それは“奇跡的”なタイミングで生まれた音が最高だった…だけなのでしょう。たぶん。

何しろ、本作で本当に凄いのは“音”。
シュールで奇抜なビジュアルが先行していますけど、世界観をガッチリと支えているのです。音楽って出力環境に左右されるんですが、それを厭わず“ニュートラル”に磨き込んでいる選択が最高なんです。

思うに効果音も“作り物”ではなく。
実際に録音したものを磨き込んだんじゃないでしょうか(あくまでも想像なんで違っていたらゴメンナサイ)。自宅で鑑賞するならばヘッドフォンで確かめることをオススメします。

まあ、そんなわけで。
音楽の持つ原始的な魅力と、その先にある可能性を描いた傑作。話によると仕上がるまでに7年以上も掛かったとか。やはり“完成させる”ことが創作者にとって重要な才能なんでしょうね。感服です。

最後にネタバレギリギリな余談として。
オチ的な部分が“誰かさん”を彷彿させるなあ…なんて思ったら、なんと御本人が参加されていました。これは知らないほうが楽しめると思いますので、事前情報は是非ともシャットアウトで。
こたつむり

こたつむり