てづか

生きるのてづかのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
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織田信長が人間50年とうたった時代からは時が流れ、いまや人間80年。
そんななか、たったの25年しか生きていない、それも何も考えずに生きてきた、いわば赤ん坊にも等しい自分がこの「生きる」という映画を観ても理解なんかできないのではないか?と、実はずっと敬遠していた。

ただ、無意味に歳を重ねたからと言って生きるということが本当に理解できるのかと言われればそれもまた違うと思う。このままいったら私は無意味に歳を重ねただけの大人になってしまう。ので。
ならば一度腰を据えてこの映画と向き合ってみるべきだろうと思い、鑑賞に至った。

というかこのタイトルであえて映画を撮ろうと思った黒澤さん、覚悟キマっちゃってんな〜って思う。真正面からぶつかっていくスタイル、好きよ、、、

志村喬さんが「死にきれない」と語るシーン。
胃が痛むのですか?と聞かれて胃ではなく……、、と胸のあたりをぎゅっと掴むところが良かった。あえて言葉にはしないけど彼の心、ひいては魂といった深い部分が痛くてしょうがないといったあの表情がいい。

志村喬さんが歌うゴンドラの唄は、お世辞にも上手とは言えないしリズムもところどころ変だしって感じなんだけど、だからこそスっと受けいられるというか。不自然なのに不自然さがないのがすごい。矛盾。

今までの映画みてきて、黒澤さんって目を魅力的に撮る監督さんだなあと感じているんですが、この映画でも志村喬さんの目がギラギラしていてすごい。

あと、会社の若い女の子、めっちゃ可愛い!!!!!わたしはあんまり食べ物に興味自体はないんだけど、それでも生きることは食べることなんじゃないかとは思っているので、彼女がもりもりご飯を食べてるシーンで結構心持っていかれた。生きることに前向きで溌剌とした力に満ちた彼女には観ているこっちも救われる。

「生まれたのは赤ん坊の責任じゃないわよ」
これマジで分かる〜!!!!!ってなった。親ってそういうこといいがち。

何かやりたいのに、何をすればいいか分からない。それでも、何かはできる。それに気づいた瞬間に歌われるハッピーバースデーに感動。あの瞬間、たしかに人間としての人生を生きはじめたんだ。

結局。
ジョジョ7部でジャイロが言っていたように。
"納得"が全てに優先するんじゃなかろうか。
他人のためにとかではなく、自分が自分の人生に"納得"できるように「生きる」ことが全てなんじゃあなかろうか。
他人は色々言いたいこと言うし、色んなこと思ったり忘れたりするけれど、納得できた結果があの公園でのラストに繋がるような、そんな気がしてならない。

というのが25歳の赤ちゃんの感想でございました。お粗末!
てづか

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