Ginny

生きるのGinnyのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
5.0
なんと申し上げれば良いのでしょうか…。

一寸の隙もないほどに完璧な映画でした。
そうラストシーンを見てすべてを振り返り、思いました。

前半まではほぼ時系列なのですが、後半は回顧シーンを上手に挟み、効果的に伝えています。
興覚めしてしまうような単純な表現(よくある邦画のお涙頂戴的なクソ演出のことを言いたいです)ではなく、工夫を凝らして「人間」というものを描いています。美学に偏りすぎず、斜に構えすぎず、あぁ人間ってそういうものだよなぁというのを多くの人を使い表現しています。
それでいて人物配置が完璧のカメラワーク。
60年以上前の作品ですが、この映画の中で描かれていることと、今の世の中、何ら変わっていないです。皮肉なものですな。

志村喬の名演には心が震えました。
そして構成力。『生きる』というタイトルが正にドンズバ。これ以上でもこれ以下でもない。最&高。
黒澤明、橋本忍、小国英雄と脚本には3人の名前が連なっていますが、どう作り上げられたのでしょうか。
なぜここまで観察眼が素晴らしく的確に世を捉えて芸術作品の映画を成立させられるのでしょうか。
とんでもない傑作です。震え上がる。素晴らしすぎて。

日本中の役所の人間にも、会社勤めの人にも全員に見せたい。
そして問いたい。お前はどう生きるのかと。
周りの顔色を伺うでない、権力にゴマをするでない、お前はどういう人間なのか、と。お前はどんな人間になりたいのか、と。
学歴も出身の大学名も会社名も私は興味はない。それを伝えるお前を軽蔑する。その他人が作ったラベルで自分を語ってどうする?

黒澤映画でおなじみの役者が、今作ではこんな役で出てるんだ!という楽しみ方もあり、それも面白かったです。
後背景が作りこまれてて見ていてワクワクしちゃう。セットも小道具もしっかり作りこまれているから映画に入り込んでしまえる。
映画っていいですねぇ。

私にお金があったら、私に権力が合ったら、力があったら、
とりあえず全国民に必修でこの映画を見させるかな。
Ginny

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