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ソウルフル・ワールドのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
2.0
[無数の無邪気な笑顔に包まれる恐怖] 40点

別に避けてきたわけではないのだが、ピクサー映画は観なくなって久しい。去年暇すぎたので機内で観て15分で離脱した『リメンバー・ミー』を除けば、小学生の時に映画館で観た『Mr.インクレディブル』以来だろう。それ以降、どれだけ良い作品だと言われても、『カールじいさんの空飛ぶ家』も『ウォーリー』も『トイ・ストーリー3』も観ていなかった。その間に、ジョン・ラセターが消え、アンドリュー・スタントンがドラマに、ブラッド・バードが実写に転向し、気付けばピート・ドクター(個人的には『モンスターズ・インク』以来18年ぶり)しか残っていないじゃないか、と16年の歴史を感じるなどした。

本作品を雑にまとめると、夢とか人生の意味とかあってもなくても人生は美しい、という感じか。ああ、こんな私までその範囲内に入れていただいて光栄ですね。という思いは抱くが、同時に諸手を挙げて褒め称えたくなるような作品でないのも事実である。間違いなく"友愛教育"にはピッタリだし、ニューヨークの市政の人々が生き生きと描かれていたが、生まれる前の魂でこっちを説得するせいで、範囲を広げすぎて逆に漠然としすぎてしまったように思える。しかも、夢があって人生の意味も見出しているような人に、わざわざこっちを振り返ってもらって"キミのことも大切に思ってたよ"と言われても、私は捻くれているので"あ、大丈夫です"と条件反射で言ってしまう。
こういう全方向への規格化された生温かさを見ると、『四畳半神話体系』の"ほんわか"を思い出してしまう。笑顔に囲まれる恐怖というか、なんというか。

ジャズの演奏はとても良かったんだが、ジャズってテーマじゃなかったんだと肩透かしを食らった気分。

追記
この映画が潜在的なプロライフ思想を持っているというレビューを読んでようやくモヤモヤが晴れた。あと、徹底的に一人にさせてくれない感じね。
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