TaichiShiraishi

前田建設ファンタジー営業部のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

これはすごい、まさかの掘り出し物案件。まさかこれまで微妙な邦画ばかり撮ってきた英勉監督がこんな特大ホームランを打つとは。タイトルやパッケージは地雷感があるが、これは誰が見ても一定以上は面白く見られるはずだ。

英勉監督の特徴的な大げさなSE演出やら、バラエティ的演出も目立つが、それがマジンガーZの格納庫の建造をまじめに考えるいい大人達という物語にはピッタリ。上地や小木などのありきたりじゃないメンツも、見事に役にはまっていて素晴らしかった。

ちょっとハイテンションすぎるきらいはあったけど。いきなりの小木の大演説でブチアゲOPもまあいいけどちょっとリアリティはないかな。

いい意味でメインキャストたちに重厚感がないので、熱い話になっても暑苦しくならず、笑いながらじんわり感動できるバランスになっているのが美点だ。

建設業界へのリサーチもかなり徹底していて、マジンガー格納庫を実際に作るならどうすればいいのかと考える過程は『空想科学読本』好きならたまらないはず。おまけにあの本と違って「これは無理」と茶化すことなく「これならどうだ!」とアイデアをぶつけるプロフェッショナルたちの姿がかっこよく感動を呼ぶ。

おバカキャライメージだった上地がちゃんとスペシャリストに見えたし、あとは町田啓太のもっさりオーラの早口オタクででもなんか可愛い感じの演技が絶品過ぎた。あの地盤の早口解説、ずっと聞いていたい。岸井ゆきのと並んだ時の収まりの良さ、可愛さは異常。

演出はハイテンションでリアリティ低めなのに、ちゃんと実話らしく肝心のマジンガーの格納庫の建造周りの描写は大真面目に細かくて丁寧だったのは好感。

そんな人々に感化されて、冷めた社会人生活を送っていた青年が情熱を持っていく様が物語の軸になっているのもドラマとしてうまいところだ。ぱっと見クールな高杉真宙が熱量を帯びていくだけでぐっとくる。

社会人になったら粛々と生きるだけってキツすぎるよね。まあ長時間労働は嫌なんだけど。あと土井君はあの書物をあの短期間で読むとか天才過ぎないか。



話としてはあくまで実話にインスパイアされた内容で、まさかの空想世界とのリンクは度肝を抜かれる。結局夢オチだったけど、あそこがシームレスで会議中の夢オチにしていたのが上手いと思う。最後のあの人登場には笑った。そして小木が第二の主人公みたいな扱いで超メイン。


その他、トイレでの会話のアングルとか室内の会議シーンの描き方の工夫などもアイデアに溢れていて素晴らしい。テンポもいいしね。

とにかく夢にあふれて、熱くて、建設業界とマジンガーへの愛もあって、でもあくまでコメディとしてのスタンスは崩さず、今年の邦画でこの楽しさを超える映画が出てくるかは疑問。

あ、でも最後に苦言。実話もそうだったのかもしれないが、マジンガーが横に移動することをメイン7人のうち誰も知らなかったのはちょっと残念。本多力が「早送りで見てて気づきませんでした!」って言ってたけど、それは失礼じゃないか?メインにとんでもないマジンガーオタクがいて欲しかった。鈴木拓はいい味出してたけど。
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