かわさき

アルプススタンドのはしの方のかわさきのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

野球映画なのに野球をしているシーンが映らないという面では、異色の映画と言えると思う。
しかし、内容は王道で爽やかな青春映画。
自分も野球の事がよく分からないから、あすはとひかるの会話に共感して笑えた!
その後話が進むにつれ、それぞれの背景や心の中が見えてきてぐっと引き込まれる。

しょうがないことに対して、本人以外がしょうがないと言って諦めや解決を促すのは、本人の立ち直りを遅くしてしまうのかもと思った。でも、その「しょうがない」は決して相手を傷つける為に言っていることではないから難しい。
気を使わせていると分かっていても、そうすることでしか自分を守れなかったりする。そこを慮ることが出来たらいいな。
あすはは、自分も言われたからってひかるにしょうがないと言ってしまった。そこだけ観ると酷いな〜と思うけど、人にされた嫌なことを人にしないって、当たり前に見えて結構難しいよね。

久住さんの吹奏楽部の友達(と言っていいのかは微妙だけど)以外は、皆いい人だなと思った。感じ悪い人ほど、ここぞと言う時に泣くのがとてもリアルだなと思った。

好きなシーンは、久住さんと園田くんが付き合っていることを知った時の、宮下さんの表情が映ったところ。こめかみあたりに流れている水分が、汗なのか涙なのか分からないのが上手いな〜と思った。
宮下さんが言った、「私一人が無視しても、くすみさんは私が欲しいもの全部持ってる。
」も青春時代の痛みを表すとても良い台詞だと思った。

個人的には、終わりにかけて「この子は本当にそんなことするかな?」と思うような言動が続いたのが気になった。けど、映画としてはこのぐらい熱量がある方が見応えがあるかもしれない。
この映画は、「はしの方」にいる人を救う映画だと思う。人に見せない苦しみが、夏の蜃気楼と共にゆらゆらと消えていく感覚がする。おすすめ。
かわさき

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