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アルプススタンドのはしの方のdaiのレビュー・感想・評価

4.5
本作は兵庫県立東播磨高等学校演劇部が上演した作品の映画化である。

演劇部の安田と田宮は野球部の応援へやってくる。しかし、ブラスバンドや補欠の野球部で埋め尽くされるアルプススタンドのど真ん中ではなく、アルプススタンドのはしの方からルールもわからず観戦する。そこへ元野球部の藤野、学校一成績が優秀な宮下がやってくる。そして赴任してわずか三か月の英語教師、厚木は執拗に声を出して応援するよう促してくる。はしの方に集まった四人は野球応援を通じて、それぞれが抱えたものを共有していく。

この映画には高校時代の葛藤が詰まっている。

勉強・部活・恋愛

このどれか一つでも頑張れたのなら、それはきっと幸せなのだと思う。しかし、多くの人は中途半端だったり、投げ出したりしてしまうものである。
ただ、大人になって気がつくことは全てにおける勝敗や優劣は大事であり、そんなに大事でもないという逆説的な事実である。成功体験が積めるという点では勝利や優位は価値あるものだ。しかし、そうでなくても過程には同等の価値があり、その体験は無駄ではない。


「しょうがないよ」

この言葉は全てのバッドエンディングをあたかもバッドでなくすような台詞だが、極めて後ろ向きな発言だ。この言葉はなるべく使わないで生きていこうと思わされる映画でした。

なお、この映画には一切野球のシーンが出てこないのだが、それが素晴らしかった。
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