りっく

アメリカン・ファクトリーのりっくのレビュー・感想・評価

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)
3.8
フォード社と並んでアメリカの自動車産業で歴史のあるGM社が中国からの資本で再生する。アメリカ人を中国人が管理し働かせる光景は、「グラントリノ」でイーストウッドだけが自分の庭=アメリカを守ろうとした世界の延長だと感じさせる。

そんな中国人とアメリカ人の協働や交流はカルチャーギャップコメディのような可笑しさや微笑ましさが前半ではまだ感じられる。特に中国から会長がやってきた際に、風水的なものを信じているのだろう、出来上がった間取りや配置に無理難題を言いまくり周囲がテンパるくだりは当事者はだったもんではないが、第三者から見ると面白い場面が続く。

だが、両者は祖国の歴史や文化も国民性もあまりにも異なる。だからこそ、互いを認め理解し、文化を取り入れようとしても、中国人とアメリカ人、あるいはアメリカ人同士でもハレーションが起こる。その代表的な論点として組合創設の是非に終盤は収斂していく。ここで多種多様なスタンスや視点を紹介するフェアな姿勢に交換が待てる。

理想を掲げ、青図を描き、アメリカンドリームを体現しようとする一方で、現実を知り、その狭間で折り合いを付けて労働し、生きていくしかない。失業するよりはマシだから感謝はしているものの、賃金や感謝の念が実感できないことに対し不満を抱える労働者たち。それでも毎日工場に通い、将来自動化されAIにとって変わられるようなルーティーンワークをせざるを得ない無常感をも漂わせる。
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