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少年の君のsacoのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.9
観賞後はとても感銘して、すぐに席を立てないくらい良かったです。
不遇な環境に生まれたチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)。
泥沼の様な生活から抜け出す為に、少女は黙々と孤独な闘いを続ける。
熾烈な受験戦争や心ないイジメは容赦なく、彼女に牙を剥き襲いかかってくる。
未来を掴む為に、何者にも関わらずにひたすら前に進もうとするけど、少女の心の奥にある“汚れのない魂”は、周りで起きる理不尽な出来事を、どうしても見過ごすことが出来ない。
危なかしくて、見ていてハラハラした。
境遇は違うが、出口の無い闇社会で諦めた様に生きる少年シャオベイ(イー・ヤンチェンシー)。
少女との偶然の出会いが、彼の中にある希望の扉を徐々に開いていく。
そして、ふたりが強い絆と裏切りのない心で結ばれていく過程がとても繊細に丁寧に描かれていた。
降り止まない雨の底で小さな白い花が健気に咲いているシーンは、一瞬、少女の姿と重なって強く印象に残った。

「サンザシの樹の下で」で輝く光の中、はにかむ様に恋をした少女を演じたドンユイ、今回は何事にもブレない芯の強い少女を好演している。
正しくあろうとする者が、止めることの出来ない暴行の濁流の中に飲み込まれていく様は見ていて、本当に心が痛い。

不可抗力の事件に巻き込まれた時、互いを守る為に頑なに口をつぐみ、互いに語りかける瞳の表情が言葉よりも多くを語り印象に残った。
歪んだ答えで掴もうとした未来を、厳しい真実に導かれて、解き明かされる後半は、とても切ない。
ラストの柔らかい日差しの中を歩くシーンに、希望があって救われました。

重たいテーマの中で、青春の純粋なロマンスを描いて心に残る優れた作品だと思う。
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