lapin2004

シャン・チー/テン・リングスの伝説のlapin2004のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ジャッキー・チェンばりのカンフーが炸裂する序盤のアクションに新章のスタート、始動したMCUフェーズ4の新風を感じた。しかし本来なら親近感が湧くはずのこの東アジア系の新しいヒーローにどうにも感情移入できないのはなぜだ。

シャン・チーのストーリー構造を 平凡な男が成り行きでヒーローに、と見ればアントマン。暗い過去を背負った元暗殺者が改心してヒーローに、と見ればブラックウィドウ(あるいはウインターソルジャー)。特別な血筋に生まれ宿命的にヒーローに、と見ればソーやブラックパンサー。クソ親父とのスケールの大きな親子ゲンカ、と見ればガーディアンズオブギャラクシー(スターロード×エゴ、ガモーラ×サノス)。いろんな見方ができるが、どう見ていいか分かりにくいということでもあるし、どの観点でも中途半端に思える(「最強ゆえに戦いを禁じた新ヒーロー」という意味不明なキャッチコピーにせざるを得ない?)。

シャン・チーの戦う動機は「妹の危機を救うため」「母の故郷を護るため」「父の蛮行を止めるため」のように「家族トラブルへの対処」を場当たり的に行なっている印象があり、成り行きでポッと出のよく分からん魔物を倒して「世界を救ったのよ!」と言われてもピンと来ないし、当然のようにアベンジャーズ入りするのも、うーん腑に落ちない。

やはりヒーローのオリジンストーリーでは正義のため、世のため人のために戦うことを決意する、改心する、立ち上がる、といった場面を描いて欲しかった。自身の生み出した兵器技術を世のために使おうとするアイアンマン、娘のために世の中に善をなす誇れる父親になろうとするアントマン、人々のための王であろうとするソーやブラックパンサー。その正義への目覚め、決意の瞬間に感動するのだ。贖罪の念であったり元々強い正義感があった者が特別な力を得たりと理由はさまざまだが、個人的にはこの正義に目覚める場面こそヒーローのオリジンストーリーの醍醐味なんだと思う。今回確信した。(元々超有名でMCU以外の単独作でオリジンが描かれているスパイダーマンやハルクなら省略してもいいのだろうが)

本作では暗殺者として育てられ母親の仇を殺したという事が、ショーンにとってどれほどのトラウマ・十字架・重い過去なのかが伝わらなかった。仇討ちの遂行から国外に姿を消して名前も変えて、「母に合わせる顔が無い」と振り返るに至るまでの心境変化の過程が省略されていた。次回作ではその辺りが深く描かれ「正義への目覚め」が補完される事を期待。
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