山本Q

アラビアンナイト 三千年の願いの山本Qのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

生き神様の新作!
V8!!V8!!V8!!V8!!
予告編は面白そうだったけど、公開時はあんまり話題になって無かったような。ともかくようやく鑑賞。

 映画はやはり面白かった。とにかくビジュアルがすごい。お話の都合上いろいろな時代のいろいろな場所がシーンごとに移り変わるのだけど、それがいちいち美しわ豪華だわ面白いわで幸福感に包まれる。
 題材的にも、テリー・ギリアムやターセム・シンの映画に期待するファンタジービジュアルが高品質で展開。最近お二人の映画活動が寂しいので、まさかこんなにしっかりファンタジー前面押し出している作品が飛び出してくるとは思ってなく嬉しい誤算。

 お話はランプの魔人話の通例をひっくり返して、願いをして欲しい魔神が願いが無い人間に願い事をしてほしいとお願いする関係性。魔人は上からでは無く節度があり、よくみると人付きが良く人情に厚い。何とも人懐っこい人物(魔神)像で新鮮味がある。魔神が物語るのも新鮮。お話の中心も願い事ではなく魔神と女の関係という点も面白い。
 対する人間もいろいろと抱え込んでおり、現代性や自分で自分の気持ちを偽っているという見せ方なのか、ここも新鮮な感じがしてやかった。

 題材としては「物語」だけど、1番大きなテーマとしては孤独だろうか。この体裁で主題が愛では無いように思う。「愛の本質」は「孤独の別な側面」にすぎないと言っているような気がする。
 魔人の恋愛遍歴を語る程で、3000年の間に移り変わった女性の社会的地位の変化を書き出しているのも面白い。そこは主人公と魔神の関係性を見せる土台部分として近代的な題材を持って来たんだと思う。

 劣らずキャラクターもまた魅力的。過去に散々描かれて来たであろうランプの魔神が、今作では親近感があるあまりみたことの無いテイスト。願い事も魔法で簡単に解決出来るようでも無く、献身的に人間に尽くす様子が微笑ましく、親近感がわく。ここでイドリスエルバのコワモテだけど、ちょっと愛嬌のある感じがキャスティングとしてハマってて良買った
 ティルダ・スウィントンは画面に出ているだけで嬉しい役者さん。今作もよかった。ただ女性っぽさは弱い人なので代わりに同世代のジュリアン・ムーアはどうかと思ったけど、想像するとテーマが「愛」に傾きすぎるような気もする。モニカ・ベルッチやペネロペ・クルスでも見たい気がするけど、そうなるともう全然別な映画でテーマに集中して見れなくなりそう。というところで、ティルダ・スウィントン様の唯一無二感は揺るがず有難く拝見させて頂きました。今作での色気は結構さじ加減が難しいのか肝なのか。人物はあまり性を感じさせないけど、アリシアの洋服は強い赤やピンクが目立つ画面配色になってたりと結構考えられてるように見えた。人物像は、男目線ではいまいち飲み込めない感じ。女性特有の上面のために自分にすら本心を偽りわからなくなっちゃった人のように見えた。これは個人的感想。それを解きほぐす魔神の物語力。というお話なのかもしれない。

 また全体の触感として、うっすらとユーモアの空気が漂い続けているのが凄い。画面は陰影はハッキリと、キラキラエフェクトなどもあり、シリアスに作り込んでいるし、お話も残酷な運命や死の予感はある。モチーフも結構ドギツイ裸とかも写ったりする。けれども暗くならずにワクワクしながら見れる。監督の登場人物に対する微笑ましいと思っている距離感がそう思わせるんじゃないだろうか。

 撮影監督は誰だ。洋服の配色やCGのスパイス的な扱いも洒落てる。
 と、調べたらジョン・シールさん。ジョージ・ミラー様とは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」参加で、オーストラリア出身のベテラン。『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー撮影賞はなるほど。初期は静かなが多いみたいだけど、パーフェクト ストーム、ハリポタあたりからCG大作も手がけているみたい。ただいま81歳。ロジャー・ディーキンスも74歳だけど、撮影監督は売れっ子がたくさん手がける傾向にあるのかな。と感えるとハンス・ジマーとか音楽系もかな。監督の女房役というかドッシリとしてお任せできる感のある方がよかったりするのかしら。
山本Q

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