山本Q

ボーはおそれているの山本Qのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

今までと方向性が違いそうなので、ネタバレ前に早速劇場へ。


映画は不条理ナンセンスギャグに振り切っていて、好みのフィールドに移って来てもらったようでありがたかった。
お話的にリアリズムではなく、寓話とか不条理路線。たぶんメンタルの治療を受けてるボーさん主観で、なのであらゆる現実認識が歪んでいる。悪夢絵見ているようでもある。体裁としては「不思議の国のアリス」かな。たぶん『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の『アンダー・ザ・シルバーレイク』(Under the Silver Lake)からPOP差を抜いたようなイメージ。
なので、今までのホラー路線や儀式祝祭高揚感を求めている人は、肩透かしをくらいそう。あえて前2作とは距離をとってきたみたい。あの尋常じゃない緊迫感をこれでもかと積み上げてくる作りも監督の魅力的なオリジナリティなので、あれが味わえないのはちょっと残念。

話法としては、不謹慎なんじゃそりゃギャグの畳み掛けでとても笑える。松本人志のコントを見ているようでもある。「面白いことが起こっているけど、そこに必ず刃傷沙汰が絡むのでなんか笑いづらい」というシチュエーションをどこまで追求できるかチャレンジしてたのかな。投げナイフが刺さらないなど、いろんな当たり前がことごとくずらされていて、ボケの連続がいちいち面白い。
良かったシーンを忘れないうちに。冒頭の出産シーンのバタバタ感。路上で取っ組み合いの目に指を入れながら目を合わせてくる暴漢。とにかく襲いかかってくる全身刺青の人。バスルームの人。あの汗か涙かわかんないけど、絶対目に落ちると思って身構えちゃった。医者一家はみんな良かったけど、娘が特に良かった。とくのペンキのシーン。娘の部屋のシャンデリアが落ちてきそうで結局落ちないギャグも面白かった。最高の体験から最悪の展開も面白かった。

あらゆるものが怖いボーさん。体裁は不条理ギャグだとして結局なんだったかわよくわからず。何か下敷の物語があるのか、風刺なのか。聖書がらみだともうお手上げ。親子関係とか、何かしらメッセージはあるんだろうけどその辺は全然わからず。
ホラー要素以外は、過去作の要素をたっぷり盛り込んで自由に作っている感じ。確かにアリアスター監督が一度制約をとっぱらって好きに作ったものを見てみたい気持ちはわかる。ありがとうA24。

役者さんはみんなあまりにもそれっぽくて俳優がやってることまで気が回らなかった。印象深いのは、ボーの子役。よくあんな、ホアキンっぽい人見つけてきたなっ!っていう。かつすごく印象的な面立ち。レディバードの神父役も印象深いカウンセラーのスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンが今回は見た目は変わらないけどインんしょうが一転する当たりかなり良かった。ドクター一家の娘ももうそういう人にしか見えないけど、時空が歪む存在感で良かった。


ちょっと今までと経路が違うけど、『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で「思わず笑いそうになっちゃった」or「笑えるのに笑ってる人いないかったけど、自分変かな?」な人にはおすすめ。
山本Q

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