竜平

アラビアンナイト 三千年の願いの竜平のレビュー・感想・評価

3.2
トルコはイスタンブールを訪れることになる物語論の専門家であるイギリス人女性、彼女がひょんなことから手にする小瓶の中から突如「魔人(ジン)」が現れてさあ大変、かと思いきや、という話。ちょっぴり変わった角度から描かれるファンタジー映画。

監督は『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー。主人公は神話などを研究する物語専門の学者、演じるのがティルダ・スウィントン。そして彼女と出会うことになるジン(アラブにおける精霊や妖怪や魔人など超自然的な生き物の総称、とのこと)を演じるのがイドリス・エルバ。前半はほぼこの二者による回想を含めた会話劇で展開していく。邦題にもなってる「アラビアンナイト」、これはイスラム世界のお伽話ということなんだけど、それをモチーフにした小説家A・S・バイアットによる短編集が今作の原作とのことで、基のほうの話、例えば有名どころだと『アラジン』とか、又は原作を知ってる人には興味を引く内容になってるのかなと。名前くらいはちょいちょい聞いたことあるけど、全く知らない身としてはジンによって語られていくストーリーにとくに興味を持つことができず、てか固有名詞がとにかくたくさん出てきたりして頭がこんがらがりつつで個人的にはこの時点でちょっと飽きかけてしまってたんだけども、まぁ辛抱しつつ見るものとして。

じつはこの前半に語られていくストーリーというのが諸々後半の展開へのフリになっている、という。3000年という長い年月でジンが見てきたもの感じてきたものってのは若干狂気的でありながらも「愛」にまつわる普遍的なものだったりして、そこにあるのは人間の欲望やそれに付随するかのような愚かさだったりもする。主人公が自分なりに満ち足りた人生を送ってきたという事実、願い事なんて一つも思いつかない、みたいな状態からの心境の変化の様子に引き込まれる。主人公が「物語」に精通してるというのもキーになっていて、最終的には途方もない時間と、また限りある人間の生涯と、そして後世へ語り継ぐべき「物語」の存在と、いろいろ掛かってなんだか壮大なものを感じれたというところ。

総じてラブストーリーになってるあたりもなんやかんや素敵に映ってしまう要因なのかな、個人的にはそこまでハマらず。もっと単純明快なのを期待してたってのもあるかも、全然関係ないけど例えば『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』とか、そっち方向の、思いのほか難しい系だったかな。まぁ今作に関してはキャスト目当てで見るのもありなんじゃないか。ティルダ姉さんはいつまでも魅力的だよねっと。
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