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hisのHrtのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
3.9
何が差別で何が差別してないことになるのか、普段からそういうことに気を付けながら生きているのに全くできていない自分に戸惑う。
それはつまり偏見によって起こりうるものだが、常日頃社会の一員として生活していると至る所に偏見が転がっていて足の踏み場も無いような状態になる。

そんな自分の心を見透かし、整理してくれるような映画体験だった。
恋愛に同性異性関係ないことは前提として、しかし直面する出来事や問題は大きく変わる。
その一つ一つを取り上げながらマイノリティの心の機微が丁寧に描かれていく。
同性カップルを演じた宮沢氷魚と藤原季節のなんと素晴らしいことか、と思わず息が漏れてしまった。

『チョコレートドーナツ』にみた題材を扱いながら実子について争うところはチャレンジングに感じた。
監修の際、そうした実際の事例を元にしたのかもしれない。
裁判の閉鎖的空間と東京の雑多な風景、白川町の(外部の人にも)広く開かれた自然の対比が鮮明に映える。
広大な風景によって解きほぐされた2人の関係性を表すようにそこに住む人々にも町の者として受け入れられるシーンには涙腺が緩む。
麻雀のおばさんが言う「この歳になると、男も女も訳わからんわ!」という台詞。
何が良く何が悪いでもなく、理解が深いわけでもなく、ただ受容しているがゆえの言葉だったように思う。
あるいは全て理解した上でのあえての言動か。

キャストたちが撮影中も撮影後も悩んでいたと語る通りマイノリティへの視線はかなりセンシティブに作られていた。
そして一種の「正しさ」のようなものを定義付けたと思う。
こういうような意義を持たせた映画が全国のスクリーンで当然のようにかかっていてほしい。
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