そんなに人間を好きになってしまったのか?
今回、理性的にそして客観的にこの映画を評価することはおれには出来ません。
その理由…
それは10数年前に遡ります。
まだ小さかった息子を当時テレビで放映されていた「ウルトラマン・メビウス」のウルトラマン・ショーに連れて行ったのです。
女性MCがマイクパフォーマンスをやる本格的なショーでおれは「今どきのヒーローショーってこんな感じなのかぁ」と微笑ましく夢中で声援を飛ばす息子を眺めていました。
思えばおれも小さい頃ウルトラマンを夢中で観てたよなぁ…何十年経ってもウルトラマンは人気だなんて凄いな…とか思ってるとメビウスが怪獣の攻撃に大ピンチ!MCがマイクに叫ぶ!
「みんな!メビウスがピンチよ!さぁみんなでメビウスを応援しよう!メビウス頑張って!」
子供たちが叫ぶ!
「メビウス!頑張って!」
「あ!みんな見て!光の国から助けが来たわ!」
MCは会場にそびえ立つタワーのテッペンを指差しました。
そこには初代のウルトラマンが拳を天に突き上げるあのポーズで立っていておれの遠い記憶にある登場フラッシュ音と共に初代ウルトラマンの主題歌が流れ始めたのです!
「胸に付けてるマークは流星…♪」
「あ!初代ウルトラマンが助けに来てくれたわ!」歓声!
その瞬間!おれは目頭がカッーと熱くなり知らぬ間に涙が溢れたのです!
自分でも驚きました。
小さい頃に観ていたウルトラマンが自分の心にそんなに刷り込まれているなんてその時まで思ってもいなかったからです。
シュッとしたメビウスに比べると顔がボコボコで(当時のテレビ放映に忠実に着ぐるみが作られていた)不恰好なウルトラマンを見てなぜ父親が泣いているのか?息子は不思議に思ったことでしょう(笑)
ネットで調べてみると初代ウルトラマン全39作は1年間放映されておりその時おれはなんと5歳でした。
幼稚園の年長さんや小学一年生の記憶なんてほとんどないのにビデオやDVDのない時代に週に1回日曜日の夜にテレビで見ていただけの「ウルトラマン」をおれは驚くほど細部にわたって覚えています。
時報と共にビルの上の「たけだ薬品」のロゴが空撮で映り「タケダ、ターケーダー」の曲が流れウルトラマンが始まる。
その主題歌、科学特捜隊の活躍、怪獣、ウルトラマンの戦いぶり…
それは「覚えている」とかいうレベルのものではなく5歳のおれにとって魂への刷り込みと言っていいほど強烈な体験だったようです。
「ウルトラマンメビウスショー!まさか泣いたのは親父の方」事件から10数年…映画館で「シン・ウルトラマン」の特報が流れた時おれはまざまざとこの事件を思い出していました。
しかも作ってくれたのが「シン・ゴジラ」の庵野秀明(総指揮)と特撮監督の樋口真嗣(今回は監督)…
「シン・ゴジラ」は2016年のおれの邦画ベストワンです。
「あまり期待するな期待するな」
そう言いながら期待で頭をパンパンにして初日の「シン・ウルトラマン」…
完全に「シン・ゴジラ」テイスト、まるで続編のようにテイストが似ている!
ただ今回は怪獣(字が違う)に加えて外星人たちが入り乱れての話だから荒唐無稽度は上がっているかもしれない。
おれは幼少時にウルトラマンを刷り込まれた特殊な人間なのでとてもじゃないが心穏やかにこの映画を観ることは出来なかった。庵野秀明総指揮はおれの一つ上だから6歳でウルトラマンを刷り込まれているのだ。彼の産み出すウルトラマンのビジュアルはおれにとって全てが「ツボ」だった!
予告でも散々流れていたウルトラマン登場のシーン…ヌメヌメとした銀色の巨人が何かボーッとした感じで突っ立ってる絵!
「これが…ウルトラマン」
見上げた長澤まさみが思わず…このシーンでおれは見事に長澤まさみとシンクロしてしまい同時に「綺麗」と呟いていました(笑)
これはCGやVFXが進歩したから美しくなったのではなく、5歳のおれや6歳の庵野秀明には「ウルトラマンはこう見えていた!」というウルトラマンの忠実な再現なのだと思いました。
もうそれからは全てが鳥肌もの…
怪獣と対峙した時の「構え」…
飛翔する時の形…
スペシウム光線をはじめさまざまな必殺技…
現代ならではのSF的ストーリー
長澤まさみの素晴らしい使い方(笑)
あのシーンはセクハラとか訳わからんとか言われてますがおれたちにとってはウルトラQの「8分の1計画」のオマージュなのでもう最高!な訳です。
山本耕史は私の好きな俳優です(笑)
ウルトラマン登場の飛来…フラッシュしながらガンガンガンと迫ってくるあまりにも有名なあのシーンをここで使うか?というセンス…
両腕で怪獣を持ち上げたままゆっくりこちらに顔を向けるウルトラマン…喋らない代わりの人間たちへのアイコンタクト…
もう長澤まさみもおれも目がハートですよ(笑)
解っている人が解る人のために作ってくれてる映画…残念なのはおそらく解る人はごく少数しかいないということ(笑)
もう酔いしれるうちにあのセリフ…
「そんなに人間を好きになってしまったのか?ウルトラマン」
泣いてしまいました(笑)
お気付きだろうか?
シン・ウルトラマンにはあのウルトラマンの代名詞とも言うべき「カラータイマー」が付いていない。
ウルトラマンはカップヌードルを食べられないというジョークにもなった地球上3分間縛り…
あれは30分のテレビ放映時間内にきっちり怪獣を倒すための素晴らしいアイデアであったわけで今回は映画だからいらないのだ(笑)
しかし地球上の活動時間が短いという欠点はやはりちゃんと設定してあって別の方法で表現しておりこれも素晴らしかった。
光の国から声が聞こえて来る…
そんなにウルトラマンを好きになってしまっていたのか?人間よ(笑)
しゅわっち(言わなかったな)(笑)