えーこ

異端の鳥のえーこのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.3
土に埋められ頭だけ出ている少年、、
『ウルトラミラクルラブストーリー』の松山ケンイチ以来の衝撃(笑)

東欧のどこか。
ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である叔母が亡くなり、差別や迫害に耐えながら、たった1人家路に向かうー
原題は"The Painted Bird"
ポーランドでは発禁書にもなった同名小説を11年の歳月をかけ映画化。
劇中のエピソードにあるが、
羽にペンキを塗った鳥を仲間の群れに放つと、異物を排除しようと他の鳥たちはよってたかって攻撃を始める。
ボロボロになって死に果てたその鳥に少年は自分を重ねる。

「黒い悪魔の目をしている」
それにしても無表情で虚ろな目、
なんて愛想のない少年なんだか。
彼の行くとこ行くとこ、おぞましい事件が次から次へと起こり、ほんとにこの子はダミアンなんじゃないかと思えてくる(←えー)
両腕を押さえつけられ、叱咤される姿は、飛ぶことを禁じられた鳥のよう。
どこか寓話のように描いているけど、
少年が目の当たりにする光景は生々しく、その目を覆いたくなるような人間の愚かさを酷さを醜さを美しいモノクロームが包み込む。

名前も呼ばれず、人と見なされず、
物のような扱いを受けていると、
人は人でなくなってしまうのかもしれない。
環境や生い立ちが悪魔を生み出すのだとまざまざと見せつけられたようで恐ろしかった。
この映画の出演が演じた彼の人生に影を落とさぬことを祈るばかりです。

よろめきながらも舞い上がる一羽の鳥、
希望の見えるラストに少し安堵した。
えーこ

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