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異端の鳥のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.9
ポーランドの作家イェジー・コシンスキの発禁の書を、チェコ出身のバーツラフ・マルホウル監督が11年(シナリオに3年、資金調達に4年、撮影に2年)の歳月をかけて映画化。
第二次世界大戦中、ホロコーストを逃れて疎開させられたユダヤ人の少年が、"異物"として様々な差別や迫害にあう姿を延々と描いた衝撃作。
なお、舞台となる国や場所を特定されないよう、インタースラーヴィク(スラヴィック・エスペラント語)という人工言語が使われている。
原題:Nabarvené ptáče 、
(英) The Painted Bird
(2019、2時間49分、R15+)

冒頭、少年(ペトル・コラール)がある生き物(犬のようなふくろうのような?)を抱え必死に逃げるシーンからスタート

その後、物語は、少年が会う人物毎に9つのシークエンスに区切られ展開する。

1、疎開先の祖母マルタ(ニーナ・シュネヴィッチ)
→少年はホロコーストから逃れ東欧のとある場所に疎開させられる。そこに住む一人暮しの叔母が病気で亡くなり家も火事で焼失したため、親元に戻ろうと歩き出す。

2、占い師のオルガ(アーラ・ホコロワ)
→生き埋め、カラス

3、小麦粉を作っているミレル(ウド・キア)
→妻への暴力、使用人の眼球、スプーン

4、鳥を売って生活しているレッフ(レフ・ディブリク)と娼婦ルドミラ(イトカ・チュヴァンチャロヴァー)
→色を塗られた鳥の落下、自殺幇助

5、ドイツ軍の老兵ハンス(ステラン・スカルスガルド)
→足を怪我した馬、ユダヤ人、処刑志願、空砲

6、心優しい司祭(ハーベイ・カイテル)と信者ガルボス(ジュリアン・サンズ)
→咳と余命、幼児性愛、トーチカにあったネズミのいる穴、肥溜め

7、未亡人ラビーナ(ジュリア・バレントバ=ビドルナコバ)
→凍えつく雪原、性的道具、ヤギの性器、山羊の頭部、追い剥ぎ

8、ソ連軍の狙撃兵ミートカ(バリー・ペッパー)
→ソ連軍の駐屯地、コサックによる軍兵士の虐殺、軍による復讐(吊るされた死体)、拳銃

9、父コデム(ペトル・ヴァネク)と少年ヨスカ(ペトル・コトラール)
→孤児院、拳銃による殺人、無表情で無口、皿、ユダヤ人識別番号、車窓を指でなぞって書いた
「JOSKA」(ヨスカ)

「家へ帰らせてくれ」

「目には目を歯には歯を」

「外に方法がなかったんだ。お前のためだったんだ」

美しい映像に対比して写し出されるものは、(僅かの善をも覆ってしまう)ひたすらむごくて残虐で醜い人間の本性。
純粋な少年が非人道的な扱いをされ続け人間性やモラルを失っていく過程に、(戦争、ホロコーストなど)過酷な環境下での人間の心の闇を見る。
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