あっさりゆで卵

HOKUSAIのあっさりゆで卵のレビュー・感想・評価

HOKUSAI(2020年製作の映画)
3.5
歴史の偉人の中で最も好きな人物であり、その作品も大好きで、よくレポートなんかのテーマにしてたなあと思い出しました。

それはさておき。

本作のキャストは本当にベストです。
青さと情熱の同居する若き北斎を演じる柳楽優弥と、この世の全てを描き尽くさんとする正に画狂老人な老年期の北斎を演じる田中泯。どちらも北斎そのものだと錯覚させるような素晴らしい演技でした。

特に田中泯は北斎でしたね。ベロ藍との出会いのシーンはアドリブらしいですが、田中泯の舞踏家としての特性と合致した最高のシーンでした。

その他にも、唯一無二の才能を前にした苦渋と、自然の中から見出す己の描きたいもの。旋風のシーン。鬼気迫る『生首図』の描画、過去と現在が交差する『怒濤図 男浪』『怒濤図 女浪』を描くシーンなど、北斎周りは良い場面がかなり多かったです。

それに阿部寛も良かったなあ。

途中に挟まれる、版木を彫るシーンや摺りのシーンの見応えも凄い。

といった感じで、キャスト、映像的ビジュアルはめちゃくちゃ最高でした。
ただ、謎も多い北斎という男を描ききれるものではなかったのかなと。幕府による表現の弾圧の方向に物語の比重があるため、どうも少し物足りない印象でした。

4幕構成なのですが、エピソードが割と断片的で、ないと繋がりがあまり感じられないのではと観ていて思いました。予備知識あると楽しめると思います。

私が期待しすぎなだけかもしれませんが、そして田中泯のその演技は一見の価値ありです。