ギルド

街の上でのギルドのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.4
【変わらない個性は変わり続ける世界でも惹かれ続ける】
古着屋で働く青年が自主映画に出演をきっかけに様々な出来事に遭遇するヒューマンドラマ映画。

「愛がなんだ」、「his」に引き続く今泉監督の最新作。本作が一番ストレートに面白くてホロ苦さ・心温まる作品でした。
本作は「自主映画製作」という群像劇を通じて、目に見えて変わる事/見えない変わる事を様々な視点で語られて、目に見えてきちんと面白くて見たあとにモチベを貰えるような作品かな。

特に劇中で印象的なやり取りに若葉さん(荒川青役)と中田さん(城定イハ役)にて、
荒川「何年ここに住んでる?」→城定「4年くらい?長いとか短いとかって曖昧で一番意味不明だよね^^;」があります。
ここに本作の良さが詰まっていて、「愛がなんだ」で描かれたLikeとLoveの境界/ベクトル/強さも人それぞれだよねって話を拡大して、曖昧さにも良い面・悪い面あるよねと着地してると思います。

「人の想い」や「発する内容」は乖離もするし、実はいい加減で曖昧であるのを群像劇での会話やり取り・映画の編集で表現すること。
そうした連続的に変わるのを下北沢の区画整理・再開発ともなぞったり、感じ方は人ぞれぞれの如くボタンの掛け違いが起きる不器用なところ。
そうした「変わる」事、「曖昧である」事を一貫して表現しつつも群像劇としてきちんと面白くしてる演出・役者陣の演技が本作の見どころだと思います!
様々な出会い・出来事が交錯する様がバラバラなパズルピースが徐々に繋がるようで微妙に無理矢理ねじ込むような感じ!


しかも本作が見事なのは、そうした連続的に曖昧に変わり続ける世界に対して、変わらないモノ・事が確かに存在する。
荒川さんという不器用な人間であっても象徴する色が青で一貫して表現するところ、曖昧であることは時に不器用に交錯して衝突してしまうけど、一方で心の拠り所になったり絆の強さを再確認する二面を持ってること。
そうした温かさが心地いいのも見どころだと思います!

2進数の0と1のように連続的に変わっていくプロセスを経て心の温もりに到達するし、人の温もりは誰にでもある。
そうした温かさを声高に伝えるのではなく、日常のちょっとした仕草で伝えるところが素晴らしいです!
あんな魅力的なケーキを食べるシーンは他にないと思う!


心地良い映画を見たい人にオススメしたい作品です!
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