真田ピロシキ

リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.0
オアシスはリアルタイムで聴いてた思い入れのあるバンド。ボーカル リアム・ギャラガーのオアシス解散から今に至るまでの経緯を追ったドキュメンタリーであるが、リアムにはあまり興味がなくてビーディーアイの解散くらいまでしか知らなかったので近年再ブレイクしてたというのは初めて知った。見てて面白いのは「バンドをやってる時は泡の中にいるようだ。泡から出たらリアルとの接点がなくなる」と言っていたように音楽をやってなければチンピラでしかなさそうなリアムの傲岸不遜で破天荒なロックンロールを体現する点。やはりロックなんてものは音楽そのものに加えて演者のストーリー・キャラクター性も重要で、それを持ちすぎるほどに持ったリアムが不遇時代を経て若い世代にまで評価され、喧嘩別れした兄のノエルには「曲ばかりを重視してリアムを軽視した」と辛辣に言われるのも分かる気がした。暴言ばかり吐いてたオアシスであるが、本作でリアムがチャリティーライブに招待された時、招待主に「昔悪口を言ったけどあれは本気じゃなかったと詫びた」と言っていたのは傲慢だけど実は気弱というパートナー評通りで笑えて、ドキュメンタリーの被写体として格好の素材だったのだろう。

だが本作にさほどノレなかったのは先述したノエルの扱い。リアムを主人公にした本作ではノエルはあからさまに悪役でボロクソに言われ引用インタビューは嫌味を言っているものと散々である。あくまでリアム視点だからノエル悪役でもいいがノエルに話を聞きバチバチに煽って悪役にするくらいの不謹慎ドキュメンタリーでも良かった。ちょっとやり口がセコいし、この映画は何だかリアムの90分プロモーションビデオのようで、悪タレ リアムのキャラクターの割に小さく纏まっててもっとロックな刺激が欲しい。

まぁでもリアムも年相応に落ち着いてきて酒もドラッグも減らしてるそうなのでこういう落ち着いた映画になるのも仕方ないのかもしれません。南米公演で声が出せなくて途中退場する所では自分が行った福岡公演を思い出した。ちなみにその時リアムの代わりにずっと歌ってたのはノエル。なんだかんだであの兄弟で補えてたと思うので、もうちょっと年を重ねて奇跡のオアシス再結成があれば良いですね。本作でもリアムは常に兄を意識していると一応のノエルフォローしてたように含みを持たせられているのかもしれません。