バリカタ

ユンヒへのバリカタのレビュー・感想・評価

ユンヒへ(2019年製作の映画)
4.0
手紙はきっかけ、太陽の光が雪を溶かす。

なんとも岩井俊二っぽい空気感。岩井俊二に憧れてまーす的な作品だなぁ〜って思ってたら、「Love Letter」に着想した作品だということを観賞後に記事で知りました。なーるほど。って感じです。よく出来ている作品ですがその分、何だか既視感を感じちゃったのが残念だったかな。でもでも、お話はよく出来ています。

舞台の一つとなる小樽のシーンがとても良いですね。静寂の小樽にシンシンと降る雪が、ユンヒとジュンの関係を表しているようです。「雪はいつまで降り続けるのか?」って叔母の言葉が切ない想いを感じます。雪の中、氷漬けとなったようなジュンの心があったのでしょうね・・・なぜか?ユンヒは離婚して娘と二人暮らし、届いている手紙・・・なぜか?まさに雪が溶けていくように解けていくストーリーがとても優しいです。

雪解けのキーパーソンがセボムという太陽のような明るい娘ってのがうまいなぁって思いました。セボムの存在は悲しみの象徴でもあり、救いでもある。そして二人を見る現代の目でもあるのかな?と。・・・物語作りに巧みさを感じました。考えれば考えるほどよく出来ているなぁって。さらに、二人の生活をサイドストーリーで徐々に見せていき、心情を表現していく点も物語をより盛り上げていったと思います。

生きづらさとは不幸につながります。少数派の幸せは多数派の不幸に繋がっていた過去、いや今もあるんだろうなぁ。できれば様々な方が生きやすい社会であってほしいし、セボムのように手を差し伸べる人が多くなってほしいと思います。手紙に本心を書き伝えるように、当たり前のように公の場でも本心を言い合え、認め合える社会になってほしいと思います。

静かに胸に染み入る良作でした。