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海山 たけのおとのkyokoのレビュー・感想・評価

海山 たけのおと(2019年製作の映画)
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尺八奏者、ジョン・海山・ネプチューン。
世界的に相当有名な人らしいんだけど……尺八といえば虚無僧よねっていう小学生レベルの私は当然ながら全く存じ上げなかった。

ハワイ大学で民族音楽学を専攻、そこで尺八に惚れ込み、70年代はじめに単身来日して京都の都山流家元に弟子入り。
排他的意識の強い伝統芸能の世界で「外国人」が生きることは難しい。それでも決して腐ることなく誰よりも練習をし、驚異のスピードで師範の免許を取得した彼は「海山」という雅号で尺八の新たな可能性へとチャレンジし続けた。ジャズ、クラシック、邦楽、ラテン音楽、ブルースと、ジャンルの壁を越えて次々と新しい音楽を作りだしていく。
尺八ってこんなにかっこいいのか!と驚いてしまった。
尺八はもちろん、竹の打楽器(TAKEDA)なんかも作っちゃう。インドの打楽器タブラとの共演がこれまたすばらしい。

家族をはじめ兄弟子や他流の奏者たちが口を揃えて彼のことを「完璧主義」だと言う。
製作も調律もすべてに妥協がなく、ミクロの単位で竹を削っている姿は鬼気迫るものがあるけれど、普段はとっても明るくて人なつこくて愛されキャラ。
知名度が上がるにつれて国内外でのツアーも増えた。私生活ではふたりの子供にめぐまれて、人生はいかにも順風満帆に見えるが、尺八に捧げた人生に犠牲がないはずがない。やがて話は夫婦の関係へと移っていく。インタビューを取るのは息子としてだいぶ複雑なものがあったらしい。

ひとりの尺八奏者の人生を追うことは、息子が父親を知る旅でもあったんだな。

美しい映像と音とともに、知らなかった世界に触れることができる良作。なのに上映が単館で一日一回、しかもたった一週間なんてもったいなさすぎる。
ここから全国展開するといいなあ。
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