乙郎さん

花と雨の乙郎さんのレビュー・感想・評価

花と雨(2019年製作の映画)
3.0
ラッパーSEEDAの同名アルバム及び同名曲をもとにした映画。この題材を映像化するに決してダサいものは作れないという作り手の意思を感じる。日本映画的な湿り気を排した冷徹で決まった映像(実家が怖いという感触は『葛城事件』いらい)。無表情を武器にSEEDAを演じる笠松将。
元の作品からそうだが、日本と外国、ラッパーSEEDAとしての顔と吉田として家族に見せる顔の分離といった部分を鮮やかな色彩で映像に落とし込んでいる。かと思うと、技巧的な部分もあり、シネフィルにも訴えかける部分も多い。
例えば、中盤に位置するきょうだいの会話が内側からの切り返しに変わった時に「私だって器用じゃないよ」と言う台詞が内言のように思える部分、芋虫が出てきて麻薬の幻覚かと思いきや草が食い荒らされていたという部分。
真骨頂は、ある悲劇が起こった時の主観からその主観と思われていた人物を映すところへの切り替わり。『無言歌』かと思った。
あえてとは思うけど、カタルシスを排した作りではあるのが、少し気にかかった。
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