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mellowのHrtのレビュー・感想・評価

mellow(2020年製作の映画)
4.1
民家をリノベーションしたであろうアンティーク感漂う花屋「mellow」、シャツとオーバーオールの上にジャケットを着る店主・夏目誠一。
そのセンスの良さに冒頭から鼻息が荒くなってしまった。
小さなブーケを作ってほしいという中学生の女の子にいくつか質問するその物腰の柔らかさから彼の穏やかな人間性の一端が垣間見れる。
こうしてゆっくりと進んでいくんだななんて予想してたらそこから3〜40分ほど使って姪っ子との日中を描いていてさらにスローな展開に。
時を同じくして学校では、またラーメン屋では、美容室では、と場面が切り替わる編集もこうした街のひと区画での群像を映すには効果的だった。
それぞれがそれぞれのベクトルを向いた気持ちを抱えながら時をゆっくり刻んでいく。
自然な台詞回しで、または台詞なくして。
スッと溶け入るような感情表現に自分の心も浸透していく。
ちぐはぐなやり取りですら微笑ましいのは、登場人物たちが肯定も否定もせず、ただ受容しているからだ。
その中で「ありがとう」や「ごめんなさい」が理想的な意味をもって繰り返される。
今泉監督の作品に共通するこうした受け容れることへの描き方がたまらなく好きだ。
人への想いを形にするブーケ。
もらった方の人もまた、そのブーケの奥に浮かぶ姿に想いを馳せている。
夏目がラストシーンで届けにいく相手との絶妙な距離感。
手にするブーケからも彼の気持ちが伝わってくる様だった。
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