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未亡人館の惨劇のsayaのレビュー・感想・評価

未亡人館の惨劇(1971年製作の映画)
3.5
母親を殺害されて孤児となったヒロインが、悪徳養護施設に預けられるのですが、脱走すれば殺されることも知らずに、まだ見ぬ父親を探すために施設から抜け出そうとする話です。
ホラーとしての完成度は決して高くないにも関わらず、最後に発覚する衝撃の真実によって、究極の選択を突きつけられる結末が、地獄のような作品でした。
少女の生きる希望や幻想を容赦なく打ち砕く運命が皮肉です。
何のスリルもない中だるみしたストーリー展開も、見る人を油断させ、悪魔の発想としか思えない結末の異常性を際立たせるための演出だったのではないかと深読みしたくなるレベルでした。
この話が奇妙なのは、物語の中心的な舞台となる養護施設がそれほど恐ろしい場所ではないことです。
補助金目当てで子供を預かり、死んだ子供の分まで補助金を騙し取ってこそいますが、施設のルールに逆らわなければ子供たちに危険はありません。
物足りない食事の量に空腹を覚えながら地味な肉体労働をさせられる日々が待っているだけです。
金儲けだけが目的の悪質な施設なら、子供たちに臓器の売買や性的労働の強要をするはずです。
実は経営する未亡人には悪意がなく、ただ狂っているだけなのでした。
SF的な妄想に憑りつかれているので、子供たちを殺している自覚すらありません。
若さを失い、自分の夫を寝取られた悲しみから、口を開けば味わい深い台詞を吐き出す未亡人は、まさに名言製造機でした。
ヒロインの母親が殺された事件と、養護施設が全く無関係なのも面白いです。
最終的に殺人事件の犯人を突き止める方法も学芸会の出し物みたいな茶番で、失笑するレベルでした。
若い女性のことを「繁殖用のメス」というパワーワードで表現する迷探偵と、逃亡中に悲鳴をあげて居場所がすぐバレるガッカリ絶叫クイーンのヒロインも見どころです。
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