りっく

失くした体のりっくのレビュー・感想・評価

失くした体(2019年製作の映画)
4.0
両親を事故で失った青年の恋模様、青年の失った片手が持ち主の元へと向かうサバイバル冒険譚、手を媒介にし両親との思い出がセピア色でフラッシュバックされる回想場面と、3つのパートがクロスカッティングされて構成された奇妙な味わいがある一作。

全体を通して詩情溢れるアート作品ではあるものの、ひとつひとつのパートがエンターテインメントとして見応えがある出来になっている。主観や客観といった視点や意識の切り替えし、高低差を使った構図や動線、3つのパートを結びつけるキーとなるハエに気を取られ、自分の片手を電動鋸で切り落とす場面の見せ方など、そこらに作り手の確かな演出が光る。

また丁寧な描写の積み重ねにより、同じ手を描いているものの、ある時はハエやネズミと同等の不気味な生物や害虫に、ある時は家族の温もりを感じ取る記憶装置にきちんと見えるところも見事。
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