タイレンジャー

デンジャー・クロース 極限着弾のタイレンジャーのレビュー・感想・評価

3.5
同じ戦争映画でも、アカデミー賞ノミネートの『1917 命をかけた伝令』よりも僕は本作のほうが好みです。『1917』は話が綺麗すぎるのが面白くないんですね。

個人的には戦場の美談は白けます。その点、本作は綺麗事は言わないし、無理に美談にしようともしていないからイイです。

お涙頂戴なし。
過度に命の尊さを訴えることもなし。
娯楽映画らしいご都合主義もなし。
同胞を守るための自己犠牲もなし。
間一髪のところで味方が助けに来ても、爽快感なし。

本作にあるのは、少しでも気を抜いたら即死、という殺伐とした現実なのです。ただただ被弾しないよう祈ることしかできない状況なのですね。

しかも戦況はかなりの数的不利。まるでアラモの砦。そして本作のベトコン兵たちはあまりゲリラ戦法を使わず、非効率にも旧日本軍のように正面からの突撃を繰り返します。

しかし、これが怖い。撃てども撃てども、相手の数はなかなか減らず、絶えず突撃をしてくるのです。とても綺麗事が入る余地はありません。

この極めて劣勢な状況をキレイゴト無しに見せつける作風はリドリー・スコットの『ブラックホーク・ダウン』に近いです。あれもまた殺伐たる戦争映画だったので僕は大好きです。

なお、エンドロールでは当時の記録映像が出てきますが、この見せ方のドヤ顔感の無さも好感が持てました。

最近の実話ベースの映画はエンドロール付近で実際の映像を見せたがりますが、「どうだ本物ソックリだろう」と言いたいかのような主張が見え隠れしていて僕はあまり好きではありません。

その点、本作は戦闘に参加した人々への敬意をサラリと表現しつつ、自慢ではなくあくまで補足的な役割として用いているのが良い塩梅なのです。

てな訳で僕は満足でしたが、演出なり展開なりほかに突出した何かがあれば、フックとなる要素があればなぁという点では惜しい作品でもありました。