GreenT

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のGreenTのレビュー・感想・評価

3.5
おいおい、テフロン加工は空焚きしない限り大丈夫なんじゃなかったの?!

オハイオを拠点とする、企業専門のタフト弁護士事務所で環境問題担当の弁護士として有望だったロバート・ビロット(マーク・ラファロ)は、ある日、ウエスト・ヴァージニアに住む祖母のご近所さんの農場主から訪問を受ける。農場の牛たちが奇怪な死を遂げているというのだ。

農場を訪ねてみると、どうやら工場廃棄物に毒性のある物質が含まれているらしいがその物質は政府で規制されていない。誰もその物質の存在さえ知らない。

その地域は、焦げ付かないフライパンで有名なテフロンを製造している化学物質会社、デュポンの工場が経済的に支えている地域だった・・・・

テフロンでボロ儲けしていたデュポン社は、テフロン製造ラインで働く人が奇形児を生んだのを知っているし、従業員で毒性のテストをしたりして危険を知っていたにも関わらず、ずーっと隠し続けてきた。

こういう大企業に普通の人たちが対抗して勝てる、という事がわかっただけでもすごい!と思いました。こういうのって、金にものを言わせて証拠隠滅とか、下手すると証人が殺されたりするじゃないですか。

劇中では、弁護士のロバートが殺されるんじゃないかと怯えるところはあったけど、他には特にありえない妨害はなくて、拍子抜けした。もちろん、ロバートの調査を邪魔するようなことはあったけど。

この小さな田舎町の人たちは、デュポンの工場に生活を支えられているので、自分の雇い主が飲水を汚染し、そのせいで癌になったりしているのに、デュポンなしでは生活が成り立たないから、それを訴えた農場主に辛く当たったりする。なんかやるせないなあ。私達って、本当になんの権利も与えられていない。

これじゃあ、トランプ支持者たちが政府や司法を信じない、自分の身は自分で守るって言う気持ちもわかるよ。

そんな中でずーっと戦い続けたこのロバートって弁護士がすごいなあって思った。出世を棒に振って、だって、企業専門の弁護士事務所なんだもん、自分のクライアントを訴えたってことでしょ?なかなかできることじゃない。

ロバートの上司のトム・タープ(ティム・ロビンス)って人も、結構正義感ある。ロバートをクビにして葬り去っても良さそうなものなのに、企業倫理のために戦おう!って他の乗り気じゃない弁護士たちをアジる。

まあもちろんこういうのはどこまで本当かはわからないけど、実際に裁判やって、テフロンのせいで癌になった人たちの裁判で勝ち続けたらしいから、脚色はあるにせよかなり信用していいのでは?と思った。

しかしテフロンって、すごい危険だけどフライパンとして空焚きしなければ大丈夫とかって言われていたけど、この映画の内容が本当なら、そんな簡単な問題なの?と思えてしょうがない。一時、化粧品に入っているケミカルから農薬まで、実はヤバいってのがいっぱい出てきたけど、段々と宗教化してきたというか、金持ちの道楽的になってきたというか、「そんなにケミカル・フリーに生活できないよ!」って思うことも多かったんだけど、テフロンって結構ヤバそうだなあ。

うちのフライパン確かめちゃったよ。テフロンだった!結構古いから買い替えてもいいんだけど、他のがテフロンより安全とも限らないしなあ。だいたい、こんだけ大事になっているのに、禁止にはなってないらしい。デュポンが自主規制しているだけみたい。

ウィキには、「この映画は『エリン・ブロコビッチ』と同様、アカデミー賞からは無視された」って書かれていて、本当にヤバい社会問題を取り上げると抹殺されるらしい。アート作品としては特に突出した作品ではないけど、ちゃんとドラマになっているし、この年のノミニー・受賞が『パラサイト』とか『ジョーカー』とか『スキャンダル』とか、社会問題に言及している作品多かったんだから、全くノミネートされないってのはやっぱり大企業の影響からはみんな逃れられないんだろうな。うーんなんか落ち込む。
GreenT

GreenT