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オフィシャル・シークレットのkaitoのレビュー・感想・評価

3.9
『オフィシャル・シークレット』

短文感想・ネタバレなし

ギャヴィン・フッド監督作品『オフィシャル・シークレット』は、

2003年のイラク戦争前に、イギリス政府通信本部で働くキーラ・ナイトレイ演じるキャサリン・ガンのもとに盗聴を要請するメールが届き、彼女がそれをリークしたことから物語が展開していく、実話をベースに扱った映画である。

初めてのギャヴィン・フッド映画であったが、非常に貴重な映画体験だったように感じる。キャサリン役を演じたキーラ・ナイトレイは彼女のキャリアの中で最も惹き込まれた演技だったと思う。『はじまりのうた』『イミテーション・ゲーム』で彼女は観たことはあったものの、そこまで演技が印象的だとは思わなかったのが本音。なので良い意味で裏切られたような感覚がある。リークを試みる際の戸惑いや関係のない人々が巻き込まれている事実に対する怒り・正義感がスクリーンから伝わる。一方で精神的に追い込まれていく姿も感じることができて、とても見応えのある演技だった。当時の主演女優賞をとっていてもおかしくはない。彼女の演技を見るだけでも十分に価値があると思う。俳優のマット・スミスもこの映画で初めて観たが、映画に溶け込めていて信憑性のあるキャラクターに仕上がっていたように感じる。

皆演技が素晴らしく、そのせいか映画全体に緊張感がもたらされていた。演技や映し方がいいから、良い意味で映画に思える瞬間が一度もない。言い換えれば何もかもがリアルに感じられ、映像やカットに頼らない本質的な緊張感もこの映画の見どころに感じる。映画的観点でいう独創的なカットはないがこの方が映画の世界観に合っていて、淡々としている方がこの映画の世界観にマッチしている。

似たような映画に『スポットライト 世紀のスクープ』という映画があるが、個人的にはそちらの方が好きなのでこの点数に落ち着く。どちらも実話ベースの映画ではあるが、後者の方が物語の加速を感じることができた。僕が批評家だったらどちらも満点に近い点をつけるけど、あくまで僕は一般レビュワーにすぎないからこの点数で。
2020年に公開された映画でチェックしておいた方がいい映画。
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